ピカピカのシルバーのベンツは、とても乗り心地が良かった。
彼女と会うのは一年振りだったけど、やっぱり安心する。
凄い包容力を感じるの。
男性を越え、女性を越えた、生々しい『人間』の姿がそこにはある。
彼女から出る言葉は、わたしのみぞおちに、血漿のように浸透していく。
後部座席にあった一眼レフを見て、趣味は写真を撮ることだと初めて知った。
『シャッターを切るのは、メスを入れる感覚と似ているの。
二度とない一瞬だから。』
…雨に濡れた西新宿も、彼女も、とても綺麗で、涙が出そうになった。
心に、ポワッと蛍の光が燈る。
今夜もぐっすり眠れそうだ。