「あー、やだやだ」

「先輩、なにが『やだやだ』なんすか」

 

「あー、やだ。バカは死んでもバカなんだよなぁー」

「いったい誰のこと言ってるんすか? オレのことッすか?」

 

「そうじゃねえよ。俺のことだよ」

「なんだ自分のことッすか。意味が全くわかりませんしぃー」

 

「若いころから、俺は自分のバカさ加減に愛想をつかしていた。でも現役バリバリの時はそれでもよかった。『いくらバカでも0.02秒でアイディアが浮かび、5分もあればロゴタイプをカタチにでき、10分たらずで"Eの7桁"稼げりゃ誰にも文句は言わせねえ』と嘯いていた」

「凄いッすね。自慢がそこまで到達していると」

 

「ところが現役から遠のいていくと、アイディアじゃなくって賢さが欲しくなってくる。・・・ウクライナ問題以降の『イスラエルによる未曾有のジェノサイド攻撃が始まり、わずか2周間でガザのパレスチナ人死者4,000人を超えた。そのうちの半分近くが子供だった』というニュースが入る。こうなると賢くない俺はお手上げだ。もうなにがなんだか整理ができない」

「ほとんどの日本国民は、この深刻さがわかってないと思うッす」

 

「イラク・シリア・ヨルダン・レバノン・パレスチナ・イスラエル・そしてガザ地区・市街地・難民キャンプと核に入っていく。またアラブ国家とユダヤ国家。わからないことだらけだ。それに今回のゼレンスキーとトランプ会談? ・・・1948年、パレスチナの民族浄化の結果、75万人以上のパレスチナ人が故郷を追われ、周辺のアラブ諸国に難民として離散する。住民8万人のガザに19万人の難民がガザにやってくるんだ」

「でもこれって、アメリカを除けば70年以上も前からのイザコザなんすね。こりゃ勉強しないと、まったくわからない。確かに賢くないと整理できないッす」

 

「だからさ、賢さなんてもんはマインドじゃ作れない。持って産まれたヒューマンコアなんだ」

「なんだ、ないものねだりなんすね。他人と比べたりしない先輩にしちゃ珍しい発言でっせ」

 

「これは比べる以前の問題だな。最近つくづく思うよ。トシを重ねていくと、つい此の間まで軽視していた学力・知力なんてモノが欲しくなってくるから不思議だ。アイディアなんか99パーセント以上が無意味。還暦以後、必要なものは『現金と賢さ』なんだってわかってくる」

「残された時間に賢さは無理。じゃ現金って、どのくらいッすか?」

 

「そうさな。一生涯かかっても使い切れないほどの現ナマさ」

「使い切れない現ナマって? 先輩の言っていた『賢さ』とイコールなんじゃないッすか」

 

「こりゃ、ナインス男子に一本とられたな。あー、やだやだ」