奪われた心。~翔side
可愛い奴だと思ってた。
俺の事を慕ってくれて、素直に反応をくれて、よく笑って、真っ直ぐに俺を見てくれて。
こんな風に懐いてくれる後輩は初めてだった。
でも…
そこまでしても俺以上に近い奴がいる。
二宮…。
あいつと同い年の中学生。
中学生同士、気が合うのかよく一緒にいる。
ほら、今もそうだ。
何を仲良く喋ってんだ?
レッスン中だというのにチラチラとその二人が視界に入ってくるから集中できない。
ヒソヒソと話しているせいか距離が近すぎやしないか?
そんなに近づくなよ。
クソっ!気になる!!
俺は踊るのをやめて二人に近づいた。
引き離したくて思わず会話に割って入る。
とはいえ、、座ったのは二人の間ではなく、その隣。 松本の隣だったが。
俺の方が先輩だからなのか松本はやたらと気を使ってくる。実際先輩だけど…。
懐いてくるくせに距離感を感じる。
それが妙に心地が悪い。
近くにいたと思ったら離れたり。
なんだよ、ツンデレ?
天然なのか?タチが悪い…。
だからわかりやすく軽くスキンシップを仕掛けてみる。
内心、結構ドキドキしてた。
松本の飲みかけが欲しいだと?
だってキスだぞ。間接キスだぞ。
こんな風に意識しながら飲むスポーツドリンクの味はそれこそ甘酸っぱいレモンの味にすら感じた。
中学生だというのに。年下だというのに。
なぜコイツにこんなにも惹かれてしまうのだろう。
「なぁ、一緒に帰んねぇ?」
「…え!?」
レッスン終わり、帰るのがいつもより遅くなった日。
俺は帰る方向が同じだからという理由をつけて一緒に帰ることを提案した。
2、3日前に変質者が出たという噂だ。
こいつは男だとはいえ小柄だし、見た目ボーイッシュな女子に間違えられなくもない。
ひとりで夜道を帰らすのもどうかと心配になって…。
「いいの!?一緒に帰っても!」
前のめりになって目をぱぁっと輝せてる。
「そう、言ったんだけど…」
そんな感激するほどのことか?
「時間、遅いし…。
親もひとりじゃ心配するかと…。」
「しょおくん…」
いや、そんなうるうるとした目で見んなよ…。
照れるじゃん…。
「い、一応だな、お前もまだ中学生だし!」
あ…、そうだ。二宮がいた…。
あいつも中学生だ。
てことは、あいつも送らないと?
そうなると二人でって訳にはいかない…か…。
「よかった!
ニノは相葉くんと帰るみたいだから。」
「そうなのか?」
「うん、あの二人は電車が同じなの。」
「そっか…、、よかった…。」
「じゃ、帰る支度してくるね!」
走る…というかスキップ気味に跳ねて見えるのは気のせいだろうか。
「えぇっ!マジで!?」
帰り道、まさかの真実を聞かされる。
「あれ?僕しょおくんに言ってなかった?
ニノは相葉くんのことが好きなの。
だからお邪魔したら悪いと思って。」
そうだったのかよ!
早く言えよ!
「みんなには内緒にしてね。」
俺はそうとは知らずに二宮に一方的に嫉妬していたのか。
「それで、お前は、ひとりで…?」
「そう、一人で帰らなきゃと思ってたから心細くて。
でも、しょおくんが一緒に帰る?って言ってくれたから……、すごく、嬉しかったんだよ。」
俺を見て、微笑む顔が月明かりに照らされて、、
「……綺麗だ。」
「へ?」
思わず口をついた言葉は闇に溶ける。
「これからも一緒に、帰る?」
「……え?」
「お前さえよかったら…だけど…」
「ありがとう!しょおくん!!」
「お、おいっ!」
ドンッと正面から抱きつかれ思わず焦る。
誰かに見られたら困るとかじゃないけど、
俺にも心の準備ってものがあるだろ。
「あ、ごめんなさい!」
パッと離れゆくその肌寒さも名残惜しい。
それは夏がもう終わろうとしているからなのか…。
「…わっ!」
急に離れるから松本はぐらりとバランスを崩し、後ろ手に転…び…
「あぶね…!!」
させるわけがない。
その腕をがっちりと掴んで、再び俺の元に引き寄せた。
「…」
「…だ、大丈夫か…?」
「……うん」
「お前は本当に鈍いっつーか、」
「……うん」
「目が離せない奴で…、」
少し身を引いても松本は俯いたままで。
屈んで目を見れば上目遣いの松本がおずおずとこちらを見つめ返してくる。
「お前のことほっとけない。」
俺は松本のことが好きなんだと思う。
「だから、俺のそばにいろよ。」
いや、かなり好きだ。
独占したいんだと思う。
「………迷惑、じゃない?」
「だったらわざわざ言うかよ。」
「ありがと…、しょおくん…。」
くしゃりと頭を撫でると照れてる君が可愛い。
今、この腕の中にいる松本の心が俺は欲しい。
おわり
【別アカより再掲載】