ありふれた日々と、ありふれない君と。番外編
潤side
もうすぐ今日という日が終わるという時間帯。
【今から行ってもいい?】
翔くんからのLINE。
自宅作業中だから、俺はいいけど…
確か今日翔くんは朝から晩まで仕事が立て込んでいたはず。
疲れてない?
こんな時間に来て大丈夫なの?
交際を始めて5年が経った俺ら。
だけど、長きに渡り想いを募らせていた俺は未だに翔くんにどこか遠慮がちになってしまうとこがある。
翔くんに対してどこかいい子でいなきゃいけないっていうのが抜けないんだろうな…。
翔くんにしてみれば今更そんなこと…って呆れられそうだけど。
一瞬迷ったけど【いいよ】と返事をする。
【何?その迷いはw】
案の定、バレてた。
程なくして翔くんが来て、ドアの前で彼の到着を待つ。
インターフォンが鳴り、翔くんの姿を確認するとぴったりのタイミングで出迎えた。
「おかえり、翔くん!」
「お!た、ただいま!
なんかいいなぁ、こういうの。
新婚さんみたいで。」
「もぉ、何言ってんのさ…」
さらっと嬉しいことを言ってくれる。
「荷物、持つよ…。」
若干照れくさいけどその新婚さんってやつに乗っかって、よくある旦那さんのカバンを受け取るというのをやろうと両手を伸ばした。
「ありがとう、潤。はい!」
「ん?え……?」
翔くんの後ろ手に持っていたのはカバンではなくて、
「お花…?」
アレンジメントフラワー。
紫を基調に5色揃って煌めいていた。
「入所記念日おめでとう!」
「お…覚えてたの?」
俺だって忙しさに追われて時々忘れそうになるのに。
「当たり前だっつーの!
忘れるかよ、潤が俺と出会う為にジャニーズに入った大切な日だからな。
「…翔くんに出会う為って、、」
「あれ?違った?」
「違わない…けど…」
「まぁ、それは冗談だとして……。
記念日はちゃんとお祝いしてあげたいって思っててさ。」
冗談って笑うけど、それって結構俺の人生の中でかなり大事なことだよ。
あの日ジャニーズに入ってなかったら、今こうしてこうやって、翔くんといれる未来はなかった。
「翔くん…」
「ていうか…こういうキザなやつ、やってみたかったり、、なんてな。」
俺に気を使わせないためか自分がやりたかっただけ…なんて、フォローもかかさないとこ。
大好き。
本当はずっとこういうの憧れてた。
翔くんも記念日とか大切にする人だからきっとこれまでもこういう事をやりたかったんだろう。
なのに俺は思い出になりたくなくて、
避けて…逃げて…。
翔くんには5年間も我慢させてしまったのか。
「ありがと、翔くん…。嬉しい…。」
「あ、指輪も…。してくれてんだな。」
「うん!もちろん。」
この前の二人の記念日に翔くんからもらったペアリング。
外出する時には持ち出せない。
人に詮索されることも面倒だけど、何かあったりして失くしたりするのが一番怖いから。
「ほら。俺も。」
かざされた翔くんの指にもお揃いの指輪が光ってる。
「あ、そうだ。あと、これも。」
次から次へと出てくる祝福の贈り物。
「前にうまいって言ってたモンブラン。
遅くなるからって取り置きしてもらったけど、さすがにこの時間だし明日にでも食べて。」
「これも…?覚えて…」
「潤とのことは全部忘れねぇよ。
潤の幸せそうな顔は絶対に忘れない。」
翔くんから渡され、両手に抱えた花とケーキ。
反対に両手が自由になった翔くんは俺をその腕の中に包み込んだ。
「遅くに突然来てごめんな。
まだ寝ないのか?お前も早く寝ろよ。」
「…え、」
熱い抱擁から一転、翔くんは離れていこうとする。
つい数日前に微熱を出してしまった。
疲れや寝不足からきてるものでよくあること。
それでも翔くんには心配かけないようにと誤魔化しても電話越しの声のトーンで速攻でバレてしまう。
「じゃあ、おやすみ…」
翔くんのぬくもり、消えていく。
翔くんの香り、薄れていく。
「い、行かないで!」
自然と言葉に出てた。
「え?潤?」
「帰らないで…。」
これまでは翔くんの明日を考えたら夜中に引き止めたりなんかしなかった。
でも、俺も翔くんには素直になりたい。
自分の気持ちを隠すことはもうやめたいんだ。
後編へつづく
【別アカより再掲載】
こちらの番外編は去年の潤くんの入所日記念に合わせて書いたお話でした😄
読み直して思ったんですが…
求め愛でも同じような展開書いてますね、確か😂
私はどうも翔くんを引き止める潤くんを書くのが好きみたいです🤭