翔side



とうとう明日に控えた5年目の記念日。

意図的なのかたまたまなのか潤はオフ。
俺の方も夕方には上がれそうなスケジュール。
よかった、今年も記念日には会えそうだ。

夜はいつものように行きつけのレストランに食事にでも行って…
本当はちょっといい場所でディナーとかしちゃってもいいんだけど。
潤の本心を掴みきれていない俺はサプライズを仕掛けることも躊躇していた。



「明日の夜、飯行かないか?」

自然に、いつものように。
潤を誘う。

「翔くん取材だけだっけ?」

「おう、長引くことはないよ。
どうする?いつもんとこ予約…」

「あ…、あのさ、」

「ん?」

「俺ん家でもいいかな…。」

「…え?」

まさかの返答。
そりゃ食事の後は俺の部屋に連れて帰ってくるつもりではいたけども。

「翔くんずっと忙しかったし、外で食事するよりも家でのんびりしたいかなぁって。」

「それって…」

「あ、でもいつものとこがよかったら全然そこでも…」

「潤の手料理が食べれるってこと?」

俺の問いに一拍遅れて潤が頷く。

「…うん、翔くんさえよければ……」

「行く!食う!」

なにそれ!最高じゃん!!
特別な日に潤の手料理。
俺の考えるサプライズなんて比じゃないくらい嬉しいやつじゃん!


「そんな元気な返事して…期待しないでよ。
大したもの作れないんだから。」

「潤の手料理が食えるのならなんでもいいさ。
いつも、ありがとうな…。」

楽屋ということも忘れ、潤の髪を撫でた。
お互いに忙しいから頻繁にという訳ではないが潤が俺の為に作ってくれる料理はめちゃくちゃ美味いんだ。
それってやっぱり愛情がたっぷりと入っているからなんだと思う。

潤が俺だけに作る料理…
あぁ、なんて素晴らしき独占欲。


「しょ、翔くん!ここ楽屋だよっ!」

幸せに浸り、撫でるだけに留まらず思わず髪の中に指を差し入れてしまっていた。
ジンと指先から伝わる潤の体温と一気に顔を赤くし、少し慌てて距離を取ろうとするから逆にグッと後頭部を引き寄せる。

5年も付き合って、その反応は反則だろ。


「しょ、、んっ…!??」

キスをした。

「ちょっ、翔くん!!何してんの!?」

押し返される胸に。

「誰もいないから、、」

潤の手のひらからも伝わる熱。

「だ、だからって…」

目を潤ませながらこちらを見つめてくる。
俺の予想外の行動に戸惑ってる顔がめっちゃ可愛い。

5年目にしてはじめて。
俺もこんな大胆な事するなんて自分でびっくりだよ。
でも、特別なこの日だからこそ、何かを変えていきたい自分がいた。




つづく




【別アカより再掲載】