翔side



潤と智くん。

嵐として同じグループにならなかったら、きっと交えることはなかっただろう。
だけど嵐になってみたらどうだ。
タイプは全然違うのになぜか一緒にいる事が多い二人。
波長が合うのか距離感がいつも近い。
その醸し出す雰囲気は恋人同士かと錯覚してしまうほど。

無防備に全幅の信頼をおく智くんに甘える潤とそれを無償の愛で優しく包み込む智くん。
俺は幾度となく智くんに嫉妬した。
俺にはない才能と優しさを持つ智くんに潤を奪われるんじゃないかって…。
あまりにも自然と寄り添う姿は我慢の限界を越え、俺が潤に告白した引き金でもある。

…が、
それはただのメンバー愛。
潤は昔から俺一筋で、俺がただ潤の想いに気づいていなかっただけ。
潤からも俺が好きだと涙ながらに打ち明けてくれた時には堪らず抱きしめてしまったくらいだ。
あ…そうだ…。
俺の腕の中、頬を赤らめて照れてる潤の可愛さに勢い余ってキスまで奪ってしまったことは言うまでもないが……それはふたりだけの秘密。
3人に知られたりしたらまたなんて言われるか…。
手が早いだなんだのって怒られるに決まってる。

みんな、潤のこと、大好きだから。
だから俺は今だに智くんには警戒中!
相変わらず距離感近いんだもん。
潤にはその気はなくたって智くんはどうだか…
無駄に多いボディタッチは油断大敵!
て…未だにヤキモチ妬くし。

そんくらい俺、お前のこと、こんなにも好きなんだよ?
潤とのこと、全部全部覚えてるし忘れたりしないけど、思い出をカタチとして残したってよくないか?





「思い出になりたくないんじゃない?」

「はい?」

「翔くんの過去にはなりたくない。
だって写真を見返すってことはさ、それは過去の思い出なわけじゃん?」
 
「え??だって、そんな事いったら今過ぎていく時間も過去だよ?
ずっとそのままってわけにはいかない…」

「んー…、なんつったらわかんないけどさ。
松潤て過去を振り返るより今を生きるって感じしない?」

「ちょっと意味が…」

「不安なんだよ。」

「え?」

「付き合って5年にもなるのに、翔くんが自分を好きだとわかっていても、どんなに幸せでも、頭では理解してても、…不安なんだよ。きっと。
ほら、松潤てあんなに男前で自信アリアリな見た目に反して、根は真面目で心配性で臆病な奴じゃん?」

「…うん」

「もしも…、もしもだよ?
翔くんと別れるなんて日が来たら、松潤、耐えられないんじゃないかな…。
事実として、残されたたくさんの思い出に、残された翔くんからの贈り物に…
それを捨てるなんて、忘れるなんて松潤にはできないよ。
だからいっその事最初から残さない。
過去の人になりたくない。
翔くんとの思い出は自分の中だけ、最小限に留めておくつもりなのかも…。」

「…そんな、、俺、潤と別れたりなんか…!」

「わかってるよ。
だけどさ、わかってても、不安になるんだよ。
そういう奴でしょ。
翔くんだってわかるだろ?潤がどれだけ真っ直ぐで傷つきやすい奴かって。
知らず知らずのうちに予防線張っちゃってんじゃないかな。
この世の中、絶対なんてないんだ。
どんなに信じたいと願っても。
そればかりは、ね…。」

「…そんなことない。
俺は…、俺は絶対に潤を手離したりなんかしない。
絶対に…だ。」

辛い。
苦しいよ、そんなの…。
嫌だよ、そんなの…。

もしも智くんの言っていることが当たっているならば…
潤は見えない不安と共に、ずっといたの?
無邪気な笑顔の裏に人知れず悩んで。
本当は人一倍大切にしたい俺との思い出を残さない努力を。

「翔くんなら大丈夫だ。
有言実行の男だもん。
松潤もきっとわかってくれるよ、翔くんの気持ち。
だからちゃんと記念日お祝いしなよ。
潤だって本当は嬉しいはずだ。」

「……潤て呼ばないでよ、どさくさに紛れて。」

「んふふ、バレたか。」

「わかるでしょ。ほんと油断ならないんだから。」

「そんだけ好きなんだな。」

「聞くだけ無駄。」

手に握りしめていたグラスを勢いよくテーブルに置く。
その拍子に中の氷が飛び跳ね、俺の気持ちも溢れてく。
 

「智くんもねぇ、いつもいつも俺が我慢して言わないのをいいことに潤にベタベタと…、近いんだよ!俺の潤に触るんじゃないっつーんだよ、まったく…もう…!」

「翔くん、飲みすぎ〜。」

話しているうちにまとまらない頭の中をなんとか整理しようとしながらもガンガンに酒に手が伸びていた。
最終的に絡み倒して先に潰れたのは俺の方。
 

「潤…、絶対、絶対だかんな…、、」

「そうだ、ウザイくらい伝えてやれ。
見えない不安なんて翔くんがとっぱらってやればいいさ。」

「んんー…」

ふわふわとする意識の中でも潤の笑っている顔だけは鮮明に見えるんだ。

そうやってずっと笑ってろよ。
絶対に悲しませたりしないから。



つづく




【別アカより再掲載】