潤side 



立ち話をしていると翔くんは翼くんと来ていたがもうすでに別れ、帰るところだったと知る。

「お前らはまだこれから?」

「うん、僕がもたもたしてたから遅くなっちゃって…」

「あー、あー!そうだった!」

「ど、どしたの?ニノ。」

隣にいたニノが急に何を思ったのか突然大きな声を出す。


「オレと相葉くん、電車の時間の変更あったんだわ。早いけどもう行くよ。」

「え〜?あったっけ?そんな…んん!?」

何かを言いかけた相葉くんの口をニノが慌てて塞いでる。

「ふははっ、ふざけて何してんだ?」

そんな二人のじゃれあいを翔くんがケラケラと笑う。

「じゃあ、僕も帰…」

「翔くん、頼みがあるんだ。
もう帰るのなら潤くんと少しだけお店回ってあげてよ。
せっかく来たのに何もしないで帰るじゃ可哀想だ、オレ達の都合で帰らせるの悪いから。」

「ニノいいってばそんなの…、翔くんだって早く帰りたいはず…」

「いいよ、俺は別に。」

「え…、でも迷惑じゃ」

「いいって言ってくれたんだからいいんじゃん?
翔くんがいたら超安心。
潤くんは目立つからね、この人混みでナンパなんてされては危険すぎる。」 

「まさか中学生相手にナンパなんて…」

「「…確かに。」」

なぜか翔くんも相葉くんも相槌をうつ。


――


「じゃあね〜、翔くん、頼むね〜。」

ニノと相葉くんが大きく手を振って視界から小さくなっていき、僕の隣には紛れもなく翔くんただひとり。
ということは二人きり!?
なわけないね…
ここ外だし、人めっちゃいるし。


「どこ行きたい?」

翔くんが僕を見る。

「行きたいとこ行ってやるよ。」

そんなワガママも聞いてもらえるの?

「腹減ったか?」

胸がいっぱいでお腹すいてるかどうかもわかんないよ。

「今日くらい奢ってやる。遠慮すんな。」

優しい…
イケメンでこんな風に優しい人がいたら全国民の女子達はみんな翔くんのこと好きになっちゃうよ。


「…い、」

「い?」

「いらない…何も…。ただ、」

「ただ?」

翔くんのこと、独り占めしたい。
今だけじゃなく、これからも…
僕だけを見ててほしい。


どれだけ欲しくてもこれだけは…

「まつ、じゅん…?」

言葉にできないこの気持ちは今にも溢れてしまいそう。

神様、無理です。
聞いたのは僕だけど許しなんていりません。
もしもダメだよと言われたって手遅れでした。




ドーーン!とタイミングよく鳴る花火の音。

「あ、始まったみたいだな。」

「でもこの場所からだとよく見えないね。」

音だけは盛大に響くけど神社の木の影になって花火を視界に捉えることはできない。


「そーいえば…、なぁ、松潤。
ちょっと走れる?」

「走る?」

「神社の裏側まで行けば見れるかも!」 

「あ、待って!しょおくん!」

駆け出そうとする翔くんを慌てて追うつもりで僕は叫ぶ。


が、

翔くんは僕を見つめると最高にカッコよくニッと口角を上げると僕にこう告げる。

「置いてくわけないじゃん。」

そう言ってぐっと手を掴まれた。

「誰かに連れ去られないようにしないとな。」

「え?なに?」

花火の音にかき消され翔くんの言葉がよく聞こえない。
翔くんの声は聞き逃したくないのにー!



移動したら、花火も無事に見れた。
その間、ずっとその手は繋がれたままだった。
離したくなくて…、翔くんから離す時がくるまではそのままにしておきたくて。
なかなか離すことのないその繋がりから翔くんの体温を感じていた。

「走ったからあっちぃな…。」

「翔くん、さっき走る前なんて言ったの?」

「…さぁ、、忘れた…」

翔くんが再び首元のTシャツをパタパタとさせる。
ネックレスがキラキラと揺れてる。
首筋に伝う汗がやたらとセクシーで直視できない。


「夏のはじまり、か…。」

「もう、はじまってるよ。」

暑い夏も、僕の恋も、繋いだその手も。
さらに熱を帯びていく。




おわり



【別アカより再掲載】