翔side
松本とのデート。
……いいや、ただの飲みだ。
食事をするだけだ。
智くんがデートとか言うもんだからその言葉がチラついて場所を探すにもいちいち悩む。
それは前からか。今に始まったことじゃない。
その割に智くんと飲みに行く時には何処にしようかなんてサラッと決まるのにな…。
松本だから。
松本と、だから。
二人で、だから…。
「……。」
やっべ、これってやっぱデー…ト…?
「バカ、調子乗んな、俺。」
独り言も絶好調。
さっきからこんな具合でちっとも決まんねぇ。
だってせっかく二人きりで会えるんだ。
ちょっとくらい調子乗ったって別にいいよな?
誰に言い訳してるのやら、、
再び俺はスマホに視線を落として店選びに没頭した。
―――
約束の日。
「お待たせ、待った?」
「ううん、俺も今来たとこ。」
待ち合わせ時間10分前に松本は俺の前に現れた。
実は30分も前から松本がいつ来てもいいようにと待ちわびていただなんて松本は知る由もないだろう。当然知らなくていいことだ。
落ち着いたモノトーンの服、メガネにマスク。
だが、オフモードでも松本のオーラは隠せてはいない。
しっかりとプライベート空間を保たれた店を選んでおいてよかった。
「松潤のことだから馬の後もジム行くと思ってさ、この時間でよかったろ?」
「あ、わかった?」
何となくさっぱりとした顔にシャワーでも浴びてきたのかノーセットのような整えられただけのふわふわとした髪。
おい、可愛いな。
「相変わらずストイックですな。」
「またまた、それは翔くんもでしょ。」
仕事があるないに関わらずジム通いはルーティンになっている。
アラフォーともなれば体型維持はもちろんのこと健康管理も必然となってくる。
「誘ってくれてありがとう。」
「え?」
向かい側に座るなり、まだ一口も飲んでないのに早速礼を言われて思わず戸惑う。
「今日……た、楽しみに、してたよ。」
「お、おぅ。」
「噂通り素敵なお店だね。
友達の間でも話題になってたんだ、予約がなかなか取れないって。」
「ま、このくらい任せろ。余裕だぜ。」
なんてカッコつけておどけてみせる。
俺の好きなとこ『ノリ』だもんな。
「さすが、ショウサクライ。」
松本がクスクスと笑ってる。
それだけでマジテンション上がるわ。
美味い酒に美味い飯に。
松本も饒舌で上機嫌。
そして、いつになくハイペースだった。
「おい、そんなに早く飲んで大丈夫か?」
「ん〜?だーいじょうぶ、明日はゆっくりなんだぁ〜。」
まぁ、確かに。
こんな風に飲める日はもうしばらくはなくなってしまうかもしれない。
見かけやイメージとは違い、いくら好きだって次の日の朝が早いと酒を飲まない真面目な奴。
今日くらい自由に飲ませてやろう。
「なら…、これとか?だいぶ飲みやすいよ?」
「白ワイン?翔くん好きだもんね。
うん、じゃ、それにする!」
オーダーすると早速ぐぴりとひと口。
「おいし…」
満足そうに微笑む口角、薄紅色した頬や首筋がやたらと色気を醸し出す。
俺は平常心を保とうと冷たいウーロン茶を喉に流し込んだ。
「あれ?翔くんは?もうおしまい?」
「……ひとまず……リセット。」
「…?」
やはりこれ以上飲ませてはいけない。
落ち着いて話せる状況ではなくなるのが一番マズイ。俺も、松本も。
まだ大事なこと、伝えてない。
「そろそろ…」
「え?」
「俺はいいけど、翔くんも明日仕事でしょ?」
俺の心配を他所に松本は時間を確認するとお開きにしようと切り出してきた。しっかりとした口調で。
なんだよ、酔ってそうに見えてそこまで酔ってない?
「待…っ!まだ大丈夫!」
「そういう訳にはいかないよ。お会計…」
「それはいい、もう済んでる。」
「え!ダメだよ!いくら?俺払う!」
「誘ったのは俺だ、元々払わせるつもりはない。」
「でもっ、」
「なら、もう一軒行く? 松潤のおごりで。
それならチャラにできるよ。」
「それは…、、それじゃ翔くんの帰りが遅く…」
「じゃあ、酔いが少し冷めるまででいい。
散歩、付き合ってくれない?
そうしたら帰ろう。」
「さんぽ………?」
まだ帰れない。
まだ帰せない。
つづく
潤誕企画をしてくれていたサラさまがこちらのお話をリストに入れてくださいました!
ありがとうございます🙇♀️
