潤side
好き?
岡田くんが?
僕を…?好きだって!!?
言われた言葉をやっと理解した。
と思ったら、
ガクン…と下半身に違和感。
「…ぅわっ!」
「松本!?」
気づくと僕は床にしゃがみこんでいた。
「どうしたんだよ、急に。」
「こ、腰抜けた…」
立ち上がろうとするのに足に力が入らない。
人の体って不思議だ。
驚き過ぎると自分の意思とは関係なく予期せぬ事が起こる。
「しょうがねぇなー。」
「え?待っ…、岡田くん!?」
「こんなとこに放置しとけるかよ。」
冷たくて硬い床の上で動けずにいる僕を岡田くんは軽々とお姫様抱っこをするように持ち上げると白雪姫のセットで使うベッドの上に僕を運んだ。
ぶっきらぼうだけど確かに感じる岡田くんの優しさ…それは僕への好意からなの?
「ごめん、いつも助けてもらってばかりで…。」
「いいんだって。そういう奴だから放って置けないタイプなんだろな、お前は。」
そう言うと、僕の頭をくしゃっと撫でる。
櫻井くんとは違うゴツゴツとした大きな掌、だけど櫻井くんと同じような温かみのある優しい手。
「…ありがとう……。」
でも…
「ごめんなさい……。」
「それが、返事?」
岡田くんの目を見なきゃ、見てちゃんと言わなきゃと思うのに…
僕は俯いたまま黙って頷くことしかできなかった。
僕なんかを好きになってくれたことは心からありがたいと思ってる。
それでも僕の心の中にはずっと櫻井くんがいる。
僕には櫻井くんしかいないんだ。
櫻井くん以外、他の誰かを好きになることはない。
「まぁ、わかってたことだけどな。」
「……え?」
「いるんだろ、好きな奴。」
「え、あ……、うん……。」
「知ってたよ、お前が櫻井のことが好きなことくらい。最初から。」
「…うん……、……え?
はっ?なん、なんで?知って!?」
「ほら、やっぱり。」
「あ…」
あんなに誰にも言わずに隠してきたことだったのに岡田くんの誘導には簡単に認めてしまった。
「初めから友達だなんて嘘つかないでそう言えばよかったんだぞ。
俺だって言わないでおいてもよかったけどお前が櫻井を好きだって認めないからさ、…ちょっと意地悪した。
でも、好きな気持ちはホントだけどな。」
「なぜ、僕を…?」
「なんでだろ…。
全然知らない奴だったのに櫻井がお前を気にかけるようになって、そのうちに一緒に弁当食ったり席が後ろだったり自然と3人で過ごすことが増えてきて…、いつの間にかいちいち反応が変な奴だな、面白い奴だなって思うようになってさ。
気づいたらお前のことを目で追うようになった。
ラグビーと筋トレのことばっか考えてたのに、いつの間にかお前がその仲間入りしてんの。
マジウケるだろ?対照的すぎて。
それでわかった。
俺、松本のことが好きなんだな…って。」
全然気づいてなかった…、そんな風に想ってくれてたこと。
いつも3人でいても僕が見つめる先には櫻井くんがいて、岡田くんは櫻井くんの親友なのに僕を邪魔者と扱うことなく仲間として迎えてくれた。
櫻井くんだけじゃない、岡田くんの優しさにずっと甘えていたんだ。
「ごめ…、僕…」
「いいんだって!振られるのわかってた。
わかってても言っときたかった。
俺さ、気持ちを隠すとかそのままなかったことにしとくの無理なんだ。
性格?性分っつーの?
お前が櫻井の事しか見てないのなんて初めからわかってたよ。
自分ではわかってないだろうけど、めちゃくちゃ恋してるって顔してるからな。」
「え!!だ、ダメじゃん!マズイよ!」
ペタペタと顔を触って確かめる。
「今やってもしょうがないだろ…。
俺の前じゃ、ただの松本だ。」
「ただの松本って…」
どんな顔よ…、それを教えてってば…。
「松本が櫻井のことが好きだって認めたから、俺はこれで諦めがつく。
言えてスッキリしたわ。
悪かったな、松本にしたら迷惑なだけだったろうけど。」
「迷惑なんてそんな…、ただビックリはした…。」
「言うんだろ?」
「ん?」
「告白。
文化祭が終わったら櫻井に告白するんじゃないかと思ってたけど?」
「…!!なぜ!そんなことまで!?」
なんで知ってんの!?
岡田くんて人の心が読めるエスパー!?
「だってお前の劇にかける気迫すげぇもん。
これはなんか一大決心でもしてるんじゃないかって、見てりゃわかる。」
もー、なんでバレてんの!
恥ずかしすぎる!
この劇を成功させたら櫻井くんに告白しようと決めたのは少し前から考えていた。
色んなことから逃げてきた僕が櫻井くんに近づけるように実行委員に自ら名乗り出て、劇の主役を引き受けようと思ったのも相手役が櫻井くんだったから。
やり遂げたら、気持ちを伝えよう。
振られてもいい。
最後にはありがとうと伝えれたら、それで…。
僕はそれを目標にここまでやってきた。
「文化祭、成功させような。
お前の告白もうまくいくように…、
ま、それだけの決心があれば大丈夫だろ。」
「大丈夫なわけないよ…。
なんの根拠があって…、」
「わっかんねぇかなー。
俺は櫻井の親友なんだぞ、俺を信じろ。」
「岡田くんを信じても…。
励ましてくれるのは心強いけど…、
うん…、でももう決めたことだから。
頑張る…。」
「よし!絶っ対大丈夫だ!
俺に任せろ!」
「だから…、なんで岡田くんが自信満々なの…。」
僕はもうその時が来ると考えたら今から心臓が破裂しそうなくらいなんだよ。
でもその前にまずは文化祭の成功、劇をやり遂げること。
「なぁ松本、これからも友達でいてくれよな。」
「も、もちろん!こちらこそです!」
「櫻井にはこのこと言わなくていいから。」
「あ…、うん…」
「だからお前も俺に変な気を使うなよ。
俺、別に振られたからってヘコむようなメンタルしてねぇから。
さて、俺も部活行くわ。
呼び出して悪かったな。」
そう言うと岡田くんは再び僕の頭をポンポンと軽く撫でてその場を立ち去った。
「岡田くん…」
本当に彼は僕のことを好きになってくれていたのだと思う。
去り際の彼の目が一段と優しくて、どこか悲しげで…そう物語っていた…。
「松本くん!!
どうしたの?帰り遅くない?」
帰る途中、部活終わりの櫻井くんがゆっくりと歩く僕を見つけて駆け寄ってきてくれた。
「ちょっと大道具の最終チェックを…」
「そんなの俺に言えばやっといたのに。
帰りが遅くなると危ないって言った…、、
松本くん…、なんかあった?」
「櫻井くん…僕…、僕ね…」
あなたの親友を傷つけてしまいました。
岡田くん、あんな感じで明るく言ってたけど、気持ちが届かないって悲しいよ…。
振られることを考えたら僕はどうだろう…。
立ち直れなくなるくらいに悲しいだろう。
きっとあんな風に笑えなくなる。
でも岡田くんは、振ってしまった僕のことばかり…
気にするなって…笑って……。
「ふ…っ、うぅ…」
「松本くん…」
辛いよ…。
振る側、気持ちを受け取れないこともこんなに苦しいんだね。
岡田くんには言うなと言われてる、だけど涙が止まらない。
なんとかして誤魔化さないと意味もなく泣くなんて櫻井くんに変に思われる。
「…ご、ごめんね、劇のこと考えてたらちょっと不安になっちゃって…、…っ!?」
櫻井くん!?
「さ、さくら…」
引き寄せられ、櫻井くんに抱きしめられている現状にパニック中。
思考を停止させるように一気に櫻井くんの香りに包まれていく。
「一人にさせてごめん。
相手役の俺がいなかったら不安にもなるよね。
大丈夫、松本くんなら必ずできる。
明日の最後の練習、文化祭当日も本番もずっとそばにいるから…。心配しないで。」
「…うん、ずっといて……。」
櫻井くんのそばにずっといたいよ。
告白しても、うまくいかなくても、
僕は櫻井くんのことがずっと好きだよ。