翔side



「「乾杯ー!」」

「おー、うまそ〜!」

「冷めないうちに食べて食べて!」

さっきまでそこで焼いていたステーキとそれに合うようにと準備されたワイン。
スープはすでに作られていたもので、やっぱり潤は今日の為に色々と準備をしていたのだと伺える。

いつから俺の予定を調べていたのやら…。
肉をもらったのは本当なんだろうけど、俺を家に招く事はきっと前々から考えていたのだと思う。
プライベートでさえスケジュールびっしりな俺とは違って事前に約束はしない潤。

そうとは言え、こんなにも用意周到だと俺も嬉しくなる。
潤が俺とのことをこんなにも考えて誘ってくれたんだ…と。



「マジでうまい!
潤はなんでもできてやっぱすげぇな。」

「…大袈裟だなぁ。
肉切って焼いただけじゃん。」

「なんつーか、センス?
皿にしても、盛り付けにしても、セッティングにしてもさ、いちいち洒落てるし。」

「うーん、まぁ、一応シェフの役とかやってたし?
そういう一連のことは勉強したから、なんとなく身についてるのかな。」

「おっかしーな…、俺もスペシャルドラマでシェフ役やった事あるけど?」

「翔くんは料理できないキャラだからね。」

「それがキャラじゃないのよ、残念なことに。」

「わざとやらないようにしてない?」

「んなことねーわ。」

「でもいいんだよ。
翔くんがやらないから俺がやるんだし。
翔くんにできないことが俺ができるってなんか嬉しいし。
翔くんの役に立ちたいってずっと思ってたから。
だから…、これからも時々こうしてご飯作らせて?
お願い!!」

手を合わせて拝むことじゃないだろ。
むしろ、俺が頼みたいくらいだ。


「ダメ?やっぱりいくら恋人になったからって出しゃばりすぎ…」

「ない!そんな事は絶対にない!!」

「ほんと?あぁー、よかったー!
じゃあ、これからも…」

「いつでも歓迎する!大歓迎!
…て、俺は前からそう言いたかったんだぞ。
別に潤が俺の家に来るのも俺が潤の家に来るのも何も遠慮なんかするなよ。
お前は変に気を使いすぎるんだ。」

「だって…、翔くんは忙しいから…。
俺にはそれがわかるすぎるくらいわかる。
同じ嵐としての仕事をしてきて翔くんのことをずっと見てきた。
昔は本能のまま翔くんに甘えてきたけど、大人になればなるほど、それじゃダメなんだってわかったんだ…。」

透き通るようなその澄んだ瞳はあまりにも綺麗でこれが潤が天使だと言われる所以なのか。
強気な松本潤は影を潜め、少しだけ弱気な潤が顔を覗かせている。



「バカだよ…、ほんとバカ。」

「え?」

俺にバカだと言いきられて、潤はポカンとした顔で固まってる。

「ひどくない?バカって…」

「お前、俺の何を見てきたんだよ。」

「何って…」

「お前が自分の気持ちを抑えて成長してきたように、俺もあの頃より随分と大人になったんだよ。」

「だから…なに…」

「昔は朝方のお前の電話に殺すぞとかイキった事言ったりだとか確かに余裕がない時もあったけど、俺もお前と20年以上一緒に仕事やってきて、どれだけ大人になったと思ってんだ。
恋人からのちょっとくらいのワガママを受け止めることくらいなんてことない。
逆に潤からのお願いほど嬉しいことはない。
電話したい?会いたい?一緒にご飯食べたい?
上等だよ。余裕だよ。
どれだけ疲れてようがお前の顔見たら、そんなの消えちゃうくらい、俺はお前に会いたいんだよ!」

「……。」

「こ、言葉では到底言い足りないくらいなんけど…、」

「……ううん、だいぶ足りた…。
俺には勿体ないくらい、たくさん…。」

これまで自分の中で自問自答してたこと、色々と言ってしまった。
長い間一緒にいれば言わなくてもわかることも確かにある。
でも、言わなくちゃわからないことも世の中にはたくさんある。

特に大切な人には絶対に伝えなくちゃならない気持ちがあるんだよ。



「わかってくれた?」

「………うん、わかった。
ごめん、俺の悪いとこだよね。
考えすぎちゃって、八方塞がりになっちゃう。
ただ、翔くんに迷惑だけは掛けたくない、そればかり気にして…。」

「だからさ…」


俺は向かい合わせの場所から潤の隣に席を移す。


「迷惑だなんて誰が言ったの?
余計なこと、お前は考えなくていいの。」

「しょお…くん…。」

「もっと潤のワガママ聞かせてよ。」

久しぶりに聞いた気がする…。
潤のその声、そう俺を呼ぶ甘えた声…。




考えてみれば…

気づかないうちに潤はすっかり俺に気を許していたのだと思う。


拒むことなく受け入れてきたキスも、何度も感じ取れる可愛らしい笑顔も、俺にしか見せないであろうその顔も。

なんとかして表の潤を壊そうとしてたけど、そんなに頑張る必要はなかった。
そんなことしなくったって、潤は潤だ。

表も裏もない、このありのままが潤のすべてだ。




つづく