ほんのすこーし修正箇所あり。
間違い探し程度なので内容は全然変わっていません。
消されませんように!
では、どうぞ。
潤side
「カンパーイ!お疲れ様でしたー!」
プロデューサーの知り合いの方が経営するバーを急遽貸切にしてくれて、居合わせた出演者とスタッフだけで軽く…なんていっても、ここにいるメンバーは活躍する役者さん達ばかり。
こんな風にワイワイとする打ち上げは初めてだったし、ちょっと大人なバーに来るのももちろん初めてで少しだけ緊張…ドキドキしながら席に着く。
「潤くん、何飲む?私ビールねー!」
「オレ、ウーロン茶。」
「はぁ?ニノくん、こんな洒落たバーに来てウーロン茶って。」
「まだこの後仕事あるんですよ?
キョウコさんみたいに酒強くないんで飲んだら仕事なんて行けないっす。」
「雰囲気だけでもさぁ…。
せめてノンアルにしなさいよ。」
「じゃ、レモンソーダ。」
「子供か、キミは!」
「ぼ、僕もそれください!」
「もー、潤くんまでー。」
「いいの。潤くんもお酒弱いんですから、やたらと飲ませないでください。」
ニノが隣にいて庇ってくれた。
キョウコさんには申し訳ないけど、櫻井さんとの約束があるから。
やっぱり櫻井さんに逆らってまで飲みたいとは思えないんだ。
ちゃんと素面で帰って、怒ってしまったことを謝ろう。
こんな些細なことでケンカしたくない…。
しばらくテーブルに運ばれてきた食事を取りつつ、みんなとの談笑を楽しんだ。
こうやって人の輪の中に入って話すのはいつぶりだろう。
キョウコさんが一緒にいなかったらきっとこの輪の中にも入れていない。
何から何までキョウコさんには感謝してる。
面倒見が良くて、明るくて、本当のお姉ちゃんみたいに優しい人。
そんなキョウコさんが悩み相談?
改まって僕に話ってなんだろう…。
頼りない僕にその悩みの解決なんてできないよ?
悩みなんてなさそうに見えるけどな…て、それは失礼か。
「すみません、オレ時間なんで失礼します。」
「おー、二宮くん。お疲れ〜。」
ニノが次の仕事に向かうために席を立つ。
「キョウコさん、頼みますからね。」
「はいはーい、いってらっしゃ〜い。」
「…ったく、大丈夫かよ。
潤くんも遅くならないうちに連絡しなよ。
今頃ヤキモキしてるはずだから。」
「ちゃんと場所もLINEしておいたし、事前に電話でも伝えてある。
それは心配ないよ。」
「そんなことない。
あの人はいつも潤くんのことを心配してる。
オレに言えるのはそれだけ。じゃあね。」
心配してくれるのはニノも同じ。
わかってるよ、もう無茶なことはしないから。
ていうか、結構飲んでいい気分になってるキョウコさんは目的を忘れていないだろうか。
まぁ、僕は別にどちらでもいいけれど?
「キョウコさん、話…
あっち行きます?」
キョウコさんは飲みかけのワインと僕は相変わらずのレモンソーダを手に壁際の二人用テーブル席に移動して、他のみんなよりも距離をとる。
ここなら背後からも会話が聞かれることはなさそうだ。
「…潤くん、酔った…かも…。」
「大丈夫ですか?今日は帰ります?」
「ううん…、酔ったから…話せる。
酔わなきゃ話せない…。」
「どうしたんですか?」
いつもとは違う物悲しげな声に本当に人には言いにくい悩みなんだとわかった。
「あのさ、潤くんね…、同性同士の恋に偏見ないって言ってたでしょ?」
「はい。」
「潤くんもよね?」
「…え?」
「潤くんの好きな人って、同性の…男の人なんでしょ?」
「どう…して…」
驚きと動揺で声が詰まる。
誰がとは知らなくとも性の対象が男であると知られたらアウト。
突然そんなことを言われて、否定しなきゃと思うのだけど…
「私もなの。」
「…?」
「私の好きな人、女性なのよ。」
「キョウコさん…、なぜそれを僕に。」
フフッて笑うキョウコさんはものすごく美人で、男性のファンもたくさんいて、それでいて女性からも憧れの存在で…。
そんな大切な話、僕にしてもいいの?
「数ヶ月、誰よりもあなたと一緒にいて、あなたの純粋な心に惹かれたの。
あ、もちろんそういう好きではなくて、人として信頼できると思った人に巡り会えたのは初めてだった。
一生懸命頑張る姿とか好きな人のために勉強熱心なとことか。
似てた…、私の大好きな彼女と。」
「その彼女さんは?
…て、すみません、踏み込んだことを…。」
「ううん、聞いて欲しい。
その為に呼んだのは私よ?
彼女は幼なじみなの。
ずっと好きで、やっと数年前に気持ちが通じ合えた。
でも私はこんな仕事してるでしょ?
彼女、不安続きでこの前口論になって…しばらく連絡が途絶えてしまって、それきりまだ…。
撮影も終わらないとこっちからも中途半端に連絡できなくてさ。」
「じゃあ、早く連絡しましょう?
待ってます、きっとキョウコさんのこと。
僕も不安でした。
自分の気持ちが伝わらなくて、ひとりでモヤモヤして、八つ当たりして…
でも、無理なんです。
このままじゃダメだって、心が晴れないんです。」
「潤くん…やっぱり好きな人って…」
「…そうです。
僕も大切に想う人がいます。」
どんなことがあっても一緒にいようと誓った人。
「こんなとこでこうしてる場合じゃないってことね。」
「お互い様です。
ていうか、キョウコさん、腐女子かと勘違いしてました。
男の子のことやたらと探り入れてくるから。」
「あら、イケメンは嫌いじゃないわよ。
恋愛対象じゃないだけで。
萌えは大事。あと美しい者同士の絡みはねぇ…」
「その言い方!
誰かに聞かれたらイメージ崩壊ですよ!」
キョウコさんと話をしたら何にあんなに怒っていたのか、そんなことどうでもいいって思えた。
グラスに入ったこれを飲んだらお迎えに来てもらおう。
今なら素直に甘えられそうな気がする。
「松本くん、ジュースなんですか?
コレ、おいしいですよ。どうぞ。」
横を通り掛かった新人俳優の…
「アラタくん?」
共演した一人、最初にあざと仕草を試して危うくNGを出させてしまいそうになった子だ。
「へぇ、キレイな色してるカクテルね。
私も欲しいな〜。」
「わかりました、持ってきますね。」
「ヨロシク!」
持ってきてくれたカクテルはベースが赤くて、黄色、オレンジとの色の濃淡が程よくグラデーションがかっていて、本当に綺麗…。
「じゃあ、これだけ頂いたら帰りましょうか。
アラタくん、どうもありがとう。」
「いえ、キョウコさん、ちょっとお待ちくださいね。」
「気が利く後輩ねぇ。」
すぐにキョウコさんの分を運んできてくれて、最後の乾杯をした。
「おいしっ!」
「不思議な甘さのカクテルですね。
おいしいです。」
甘いからアルコールが入っていることを忘れてしまいそうだ。
グラスも小さいし、あっという間に飲んでしまった。
でも久しぶりのアルコールからなのか、酔いが回ってくるのも早い。
熱い…。
なんだろ…、全身に熱がこもる…。
「すみません…、キョウコさ…
ちょっと、お手洗いに…」
水道で顔でも洗えばスッキリするはず。
視界もどこかぼやけてくる。
おかしい…。
「はぁ…っ、はぁ…」
よろけながら辿り着いたトイレ。
ジャーッと水道を流して、手を浸す。
首元にその手を当てて冷やすけど、それだけじゃこの熱は収まらない。
びちゃびちゃになっちゃうけど、顔まで洗った方がいいかな…
ぼやっとする鏡越しに誰かが映った…。
「大丈夫?松本クン。」
ガタッ…バタン…ッ!カチャ…
腕を捕まれたと思ったら、個室に突き飛ばされ、更には鍵まで掛けられた。
「松本くん…、身体、大丈夫ですか?」
「…んッ!?ん!」
口を手でまるっと覆われて声が出せない。
「んー!」
「暴れないで?
こんなとこ見られたら、あなたもマズいでしょ?」
「ふ、んっ!んっ…!」
抵抗しようにも何故か力が入らない。
酸欠も相まって頭もぼーっとしてくる。
「媚薬入りカクテル、どうでした?
あれ、甘くて美味しいんですよ。」
「…っ!やめて…、離し…て!」
グッと顔を引き寄せられて、唇だけは奪われまいと首を振る。
「なんでこんな…、
アラタ…くん…」
恐怖で自然と滲む涙に彼の顔が歪む。
「最初に誘ったのは松本くんだよ?
その気にさせといて、それはないでしょ?」
「だって…、あれは、お芝居…」
「男もイケるって、顔に書いてあったよ。」
「やだ!いやだ!!」
首元に歯を立てられて、このままじゃ…僕は…
「溜まってんだろ?勃 っ てる。」
「…ぅ、あっ…、、」
媚薬のせいで昂った熱は櫻井さんに抱かれそびれていた身体には十分な効果があって、意図しなくとも反応してしまうアソコをどうすることもできなかった。
なんで?
こんなのは僕じゃない!
「……あ…っ…、、」
次の瞬間、思いきり股間を握られ…
それが引き金となった。
「あれ?松本くん…、
イ っ ちゃったの?敏感すぎ。」
「く、うぅ…っ…」
気持ちよくもないのに、
櫻井さんに触れられたわけでもないのに、
あっけなく爆ぜてしまったことにただただ涙が止まらない。
もう抵抗する力すら残ってない。
下半身から崩れて落ちていく身体は、どうすることもできない。
櫻井さん、たすけて……
身体中をまさぐる冷たい手。
気持ちが悪いのに身体は熱いまま。
「さ……く…、ら………」
あなたの名前を呼ぶ。
届くことはないかもしれないけど。
それでもだんだんと意識の薄れていく中、
僕が櫻井さんを呼ぶことを諦めてしまったら、
もうあなたのところには戻れない気がして……
怖かった…。