『お目覚めかな?』

白いフワフワな服を着た…人?なのかな…。
その人が横たわるぼくのそばに来て、ふにゃりと微笑んだ。

「あなた、だれ?」

『神様とでも言っておこうか。』

「かみさま…。」


そして、続けてあの言葉をぼくに向けて投げかけたんだ。


「じょ…ぶつ…?」

みれん?
難しい言葉はよくわからない。


『君は天に召された。』

「てん?」

『残念だけどね…、死んでしまったんだ。』

「……え?」

しんだ…?
なんで?ぼくは痛くも苦しくもないよ?
 

『君は死ぬ瞬間まで何かに強く意識があったんだろう。
幸いにも一瞬にしてここに飛ばされてきた。
痛みも苦しみも感じることもなくね。』

「じゃあ…もう…」

あの世界にもうぼくはいない。
あの人にももう会えない。
死んでしまったことよりもそれが悲しい。


『ただ…』

「…ぐすっ……、」

猫でも泣くんだな…なんて、自身の目から伝う雫を手で擦る。


ん?手?
指が5本。肌色の手!?


「なにこれ!?」

叫んだ声に自分がビックリする。

抑えた口元にはぷくりとした唇があって、身体はどう見てもヒトの体。


『君の思考はすべて把握済みだ。
成仏するには君のその想いが昇華されなければならない。』

「あの人に会いに行ってもいいんですか…?」

密かに胸に秘めていた想い。

猫じゃなかったら、あの人と話せるのかな? 
猫じゃなかったら、友達になりたいな…。
猫じゃなかったら、好きって言ってもいい…?



『ここでいつまでもさまよい続けているわけにはいかない。
だから、君には数日の猶予が与えられた。
人として生きるための記憶を少しだけ入れさせてもらってる。
けれど、それは微々たるもので時間とともにすぐに消えてしまう。
残された時間は決して多くはない。
きちんと空の光になれるよう、全うしてきなさい。』

「…は、はい!」

神様の淡々とした言葉の前にわからないことだらけなのに、今、自分のやるべきことなんだと理解した。


同等に交わることのない存在。
人間と動物。
姿形も違えば、言葉も通じない。

もう死んでしまったぼくだけど、もう一度会いたいと強く願った。



────────



まあくんはやっぱり優しい人だった。

初めて会った僕にもすごくよくしてくれた。

薄れていく記憶の中でもまあくんのことは絶対に忘れなくて、だからずっと待ってた。


でもまあくんにはすでに想う人がいて。

それが恋人かはわからないけど、その人の匂いに気がついた時にすぐにわかった。

僕の中の闘争心が疼いて、まあくんに仕掛けるようにキスをした。
オスであるぼくを受け入れてくれるかわからなかったけど、たくさんたくさん愛してくれた。

まあくんの身体からはもう別の人の匂いはしない。
まあくんだけの匂いにくるまって、抱き合って眠った。

たくさんの幸せと愛をもらえたのだから、もう十分だ。


さびしいけど、もう行かなきゃ。

まあくん、待ってるって約束守れなくてごめんね。



神様、ぼくはもうお空の星になれますか?