智side



『この前の事、謝りたい。
すぐに帰らないで。』

楽屋でパソコンに向かい、ぼんやりと映像を流す松潤の肩に手を置いた。
ピクンと身体を揺らすその耳元でそっと囁く。

『…わかった。』

この前のことを知りえない3人に聞こえないくらいの小さい声で松潤は頷いた。




「ちょっとぉー!
リーダー、松潤にくっつきすぎじゃない?」

「そぉかー?
相葉ちゃんもいつも距離感おかしいぞ。」

相葉ちゃんに見つかっちゃった。
5人でいる時に仕掛けるのはなかなか難しい。
なんだかんだでみんな末っ子大好きだもんな。
みんな視界のどこかで気にしてる。
そう…きっとカレも。


「あんた達、Jは連日打ち合わせで忙しいんだから邪魔しちゃ悪いでしょ。」

「映像チェックだけだから、大丈夫だよ。
ニノ、ありがとうね。」

ニノなんかは違った意味で松潤の行動に目を光らせてるから、もしかしたら、松潤の微妙な変化にも気づいているのかもしれない。
オイラが仕掛けたとはいえ、落ち着かない様子でいるのはカレが見ているから?

さっきから黙ってこちらの様子をじっと見つめている。
唇に当てた指。
考え込むような仕草。

翔くん、見てるだけじゃ潤は手に入んないよ。









5人での収録が終わって、ニノは相変わらずケータイ片手に器用に操作しつつ早々と楽屋を出ていくし、相葉ちゃんもレギュラー番組の打ち合わせ、翔くんも次の仕事が迫ってて、すでにマネージャーがスタンバってる。


「まつも…、」

収録は完璧にこなしていた松潤も休憩中は言葉数が少なかった。
それを翔くんが気にしないわけがない。


「櫻井さん、車回しておきますから!
すぐにお願いしますね!」

「あぁ…、わかった。」

声を掛け損ねた翔くんはチラリ松潤を見ると、急げと言われた割にゆっくりと楽屋を後にした。





あの日ぶり。
松潤とふたりきり。


「どう?翔くんに聞いてみた?」

ドアを背に後ろから座ってる松潤の背中に問う。


「……ううん………、聞いてない。
言うつもり…ない……。」

「じゃあ、オイラでいいじゃん。」

「よ、よくないよっ!
そんな簡単に…っ、」

振り返って、ムキになって…
だけど、どこか弱々しい。
翔くんのことになると、ただの乙女だよな。 
見た目、こんなに男前なのに。


「別に深く考えないでよ。」

松潤よりも背が低いことをいいことにスっと懐に潜り込む。
頬に手を添えて、下から見上げて唇を寄せる。


「…やっ、リーダ…っ…」

「逃げんな!」

「ぅんッ…!」

今度は両手でがっしりと顔を捕まえて、その唇を捕らえた。


「…ンッ、んんー…!や、だっ…」

さすがにドンっと思いきり突き飛ばされて、体が吹っ飛ぶ。


「や、なに……やだよ…、しょ…く…、俺…」

みるみるうちに涙をボロボロと落としていくその姿にどうしようもなく欲情してしまう。

翔くんでいっぱいのコイツが何としても欲しい。

拒まれ噛まれた血の味のする唇をペロリと舐めた。




あぁ…なんてこった。場所が悪い。
もっと計画的に誘い込めばよかった。


「バカだね。隙がありすぎんだよ。
この前襲われたばっかだよ?
なんでもっと警戒しないのかなぁ。」

ここが楽屋じゃなきゃ喰ってしまいたい。
長いこと5人で守ってきた嵐。
いくら極上の獲物を目の前にしたって、
部外者に見つかって壊すわけにはいかないもんな。


「…だって、リーダーは…
大切なメンバーだから…。」

「潤……。」

この期に及んでまだそんなこと言ってんのか。


「俺、リーダーのこと好きだよ…。
どんなことがあっても、なにをされても、リーダーはリーダーなんだよ。
嵐をずっと守ってきてくれたリーダーなんだよ。
こんなことで嫌いになんかならない。
リーダーがいてくれなかったら…
嵐のリーダーがリーダーじゃなかったら、
俺も、みんなも、嵐も…、
ここまでやってこれなかった……。
だから……、俺は……リーダーが大好きだよ。」

透き通るような大きな瞳でそんな告白するの、反則だろ。

真っ直ぐで素直でホントなんなんだよ、コイツは。
そんなにぐしゃぐしゃな顔で、めちゃくちゃに涙を流してさ。


「バカだよ…。潤は……。」

こんなにも胸が苦しくなる告白をされるなんて思ってもみなかった。

愛情。
大きすぎる潤の嵐愛、メンバー愛。
オイラには十分すぎる愛。


こんな天使を汚すなんてできっこない。