う…

「わぁっ!」

唇が触れる瞬間、思わず顔を伏せる。
あまりにも直前だったから、その柔らかい唇は俺のおデコに触れる形になった。

あ…柔らか……



「こーら、隠れるな。」

耳元で甘く囁かれて、顔に熱が溜まってくる。
そっと顔を上げて、チラリとその声の主の顔を覗いた。


「翔……くん……?」

目の前にいるのは優しく微笑む人。

近い…っ!
恥ずかしくてまた視線を下に向けた。


なぜ?翔くんが。
翔くんがいるってことはここは翔くんの部屋?
しかも俺、こんな格好でベッドで爆睡してたの?
意味がわからない。

これってまだ夢の中……?

 

「しょうがないなぁ、潤は。」

カーテンを開け、ベッドの端に腰掛けた拍子にきしりとスプリングが沈む。
そのまま腕が伸びてきて、ゆっくりと引き寄せられた。
  
「……!!」

なにこのシチュエーションは。
しかも…潤…て言った?
名前?呼び捨て!?

こんなの絶対夢だよ……!


頭ん中がぐるぐるしてる。
混乱してぐるぐるする。
目が回って目眩でも起こりそうだ。




「シてる時は大胆なくせに朝になると急に恥ずかしがるんだもんな。」

してる……?

「……なにが??」

よくわからないワードが次々に放たれるから、その情報に追いつかなくて、再び顔を上げ聞き返してしまった。


「昨日久しぶりに潤を抱けて嬉しかった。」

抱けた? 
潤を…?

「………え?」

翔くんの腕の中できっとめちゃくちゃマヌケな顔をしていたんだと思う。


「そうやって恥ずかしがるとこがまた可愛いんだけどね。」

固まったまま動けない俺に翔くんは聞いたことのない極甘なセリフを口にする。



えーと…

翔くん、もう一回頭からちゃんと説明してくれるかな?
翔くんが昔勉強を教えてくれた時みたいにわかりやすく、順序立てて、俺がわかるまで。

て、言おうとした。


「しょ……、んっ…ぅ、」

だけど無防備に晒した唇は今度こそ翔くんの唇に捕まって、声にならなかった。