和也side



「潤くん!」

「あ、カズ!おはよう!」

バス停から前を歩く潤くんに声を掛けた。


「おい、俺もいるんだけど。」

「あ、翔さん。どうも。
ね、ね、潤くん。クラス発表一緒に見に行こうよ!」

「お前…、」

「カズー、しょおくんに意地悪しないでよ。
先輩だよ、一応。」

「て、潤まで!一応ってなんだよ!」

「あはは。そんなにムキにならないでよ、センパイ♡」

そういう潤くんの頭をくしゃくしゃって翔さんが撫でる。


翔さんを見つめる潤くんの視線が、
潤くんを見つめる翔さんの視線が…

二人の間に流れる甘い空気に酔いそうになる。




。・:+°。・:+°。・:+°



バレンタインデーのお返しに潤くんの家に向かう。

一旦、家に戻って、小さな包みをポッケに入れ、すぐに自転車に足を掛けた。


潤くんから貰ったチョコはみんなと同じ義理チョコだろうけど、せめてお返しは一番にしてやろう。
なんなら翔さんよりも先にね。




ピンポーン…


インターフォンが響くのが聞こえる。

潤くんと一緒に帰ってきたのだから、家に居るはずなのに…。
自転車もあるし。


出掛けちゃった?
まさか翔さんち?

諦めきれないオレは何度かインターフォンを鳴らす。

これが最後。とボタンに手を掛けた瞬間、
カチャとドアが開いた。


「は、い…、どちらさま?」

隙間から潤くんが顔を覗かせた。

「潤くん!」

「えっ?あ、カズ!?」

「いるんじゃん!なんですぐ出てくんな…い、」


この潤くんの顔…。

見覚えがある。

少しピンク色になった頬に、瞳なんて溶けそうなくらいに潤んでいて…。


潤くんをこんな表情にさせる人なんて一人しかいない。



「カズ?どうしたの…?」

「えー、あー、あのさ。
ホワイトデーだから、お返しどうぞ。」

ポッケから包みを取り出して、無造作に潤くんに差し出した。
所詮、中学生がお小遣いで買える程度のアクセサリー。
星が散りばめられたシルバーチェーンのブレスレットは潤くんに似合うと思ったんだ。


「あ、そんな、よかったのに。
覚えててくれたんだね、ありがとう!」

会話の途中でふと玄関を覗くと、見覚えのあるスニーカー。


やっぱり…。


「じゃ、オレ帰るね。」

「え?えっ?せっかく来たのに!」

「邪魔したら殺されそう。
あ、すでに邪魔しちゃった!
翔さんに、よろしくー。」

「あ、ちょっと、カズ!」

後ろ手に手を振りながら、オレは自転車を漕ぎ出した。


その後のことは、確かめてない。

次の日。
着替える時に見えた鎖骨の内出血の跡。

それが答えだろう。




。・:+°。・:+°。・:+°




「順風満帆、ラブラブですね。」

「カズ!もぉ、からかわないでよ…。」

オレの言葉にハッとして慌てて、翔さんから離れる。

残念そうな翔さんの顔…。
そんなにいつもくっついていたいのかよ!


潤くんをこんなに笑顔にさせるのは翔さんしかいない。





悔しいけど…。

未だにその想いがかすめる。



だから、せめてその笑顔を守りたかった。

なのに、君の笑顔を守れなかった。



あんな奴に奪われるなら、オレが奪ってしまえばよかった。

こんな失態、初めてだ。