翔side


ねぇ、今、これ…チャンスだよね?


誰もいない家。
二人きりの部屋。
重なる唇。
密着する身体。


どうしよ…いいの?進んじゃうよ?
なんなら翼から貰った誕生日プレゼント使っちゃう!?

思いがけず訪れたチャンスに自問自答を繰り返す。


「どうしたの?しょおくん?」

潤はうるうるとした瞳で俺を見上げていて、固まって動かない俺に声を掛けてきた。

「あ、いや…その…」

「もう、おしまい?」

「へっ?」

「しないの?…キス…。」


こんな…こんなことって…。


今までされるがままだった潤が俺の首に手をかけてキスをせがむ。
子供だと思ってたのに。
俺よりも小さくて、声変わりだって完全じゃない。
少し高くて、掠れた声。

俺を煽るのに充分な要素だ。



もう!なるようになれ!
やり方とかもう一回予習しとけばよかったー!

潤に再び深く口づけようとした

瞬間…


「わぁー!忘れる所だった!!」

急に潤がガバッと俺を押しのけ、起き上がる。

「な、なに!」

「しょおくんのお母さんが出てく時、頼まれたの。紅茶!」

「こぉちゃー!?」

「そう。美味しい紅茶があるから、しょおくんに戸棚から出してもらってって。
両手塞がってたから、持ってくって言っちゃった!」

「いいよ、そんなの。」

「ダメだよ!約束したのに。
ほら、しょおくん、早く探して!」


俺の手を引き、部屋を出てこうとする。

そんな約束どうだっていいじゃん!
紅茶くらいなくたってケーキは食えるだろ!

潤の真面目な性格は好きだけど、今は不真面目でいて欲しかったよ。
そんなお前だからうちの親も俺以上に可愛がるんだろうけど。



しぶしぶ紅茶を探しにキッチンに向かう。


「しょおくん、今月誕生日だね。」

紅茶を探す間、聞いてくる。

「欲しいもの、ある?」


考えたんだけどー。って考え込む潤を引き寄せ、耳元で囁く。

「潤が…欲しいな。」


バッ身を離し、真っ赤になって耳を押さえる。

意味わかってるのか!?


「…しょおくん、僕はあげられないよ。
人間だもん。」




やはり……わからないか…。