今回は精神論について。

何年か前にニュースで見たのですが、ある企業が新人研修として、道を歩いてる知らない人に声を掛けさせ、名刺交換をせまるという訓練を、人と話す度胸をつけるためにやっているとの事でした。

仕事で急いでるかもしれないサラリーマンにとっては迷惑な研修です。
しかも知らない人に個人情報でもある名刺を渡せと言ってるわけですから。

ある新人の女性社員は、よっぽど辛かったのでしょうか声をかけた人から、
「こんな新人研修をさせる会社はやめたほうがいいですよ。」
と言われると、泣き出してしまったそうです。

そこに至るまでに何人もの人に断られイヤなものを見る目で見られたのではないでしょうか。

私としては、確かに度胸はつくかもしれませんが失うものも多いような気がします。というかこの女性のように人によってはトラウマになるでしょう。
この女性はその会社をやめたそうです。

番組のコメンテーターは、

「泣くほどの思いをした新人の女性にとっては、こんな経験をしたら、もともとあった仕事に対する真っ直ぐな気持ちさえ捻じ曲げてしまう。」

「いつまで日本人はこんな精神論を引きずってビジネスをする気なんだろう。こんな事しても、結局は合理性に負けるんだけ。」

「経営者が社員をある意味、駒のように使いたい気持ちがあるのでこんな根性論をやっている。」

と言ってました。
なるほど確かにそうだなと思いました。

どんなイヤな事でも会社に言われたら根性でやる社員が欲しいのでしょう。

人と話す訓練なんてもっと他にやりようがありますから。

日本という国は、とにかく「辛い経験を経た人間が偉いんだ」という考えが賞賛される歪んだ考えが残ってると思うんですよ。

苦難を乗り越えるのは人生の王道かもしれないけど、どんな結果が得たいかをメインに考えるのではなく、とにかく苦労する事が目的になってしまってるのは病的だと思いますね。

この道ゆく人にランダムに名刺交換をせまる研修も、得たのは度胸ではなくトラウマという人も出てくるに決まってます。

強くなるどころか弱くなりますよ。

何でもいいから辛い思いすりゃ強くなるなんて幻想ですよ。