気がつくとプロイセンの日誌にはシミが付いていた。
ジワリとインクが滲む。
「………おい、人の日誌を勝手に見ておいてシミを付けるなよ…」
呆れたような声が扉の方から聞こえ、ハンガリーは飛び上がった。
もうそんなに時間が経っていたのだろうか?
「あ、ご、ごめん…。
その…本を取ろうとしたら偶然通路を見つけちゃって…。」
流石にプロイセンのだとしても人の日誌を見ていたのが見つかってしまったのだ。
慌ててしどろもどろと言い訳をしていると、プロイセンは無表情でハンガリーに近づいて行った。
「プ、プロイセン…?」
無言で詰め寄るプロイセンにハンガリーは恐怖を覚えた。
普段あんなにコロコロと表情が変わるプロイセンが無表情で、しかも無言で詰め寄るのだ。相当怒っているのかもしれない。
無表情のプロイセンが恐ろしくて視線を下に向けてしまう。
とうとうハンガリーは本棚とプロイセンの間に挟まれて、逃げれなくなってしまった。
次の瞬間には壁ドンをされ、完全に動きを封じられた。
横にはしっかりと筋肉の付いた腕が逃げ道を塞ぎ、足はロックされて動けない。
もう1度ハンガリーが謝罪を述べようとした時、プロイセンが口を開いた。
「あの時期の事を思い出しちまったのか?」
「………え?」
驚いて視線をプロイセンに戻す。
プロイセンの表情は無表情から悲んでいるような表情になっていた。
「…別に…?」
「嘘だろ」
見抜かれて少しずつ視線がまた下がる。
「本当よ」
「じゃあなんで泣いてたんだよ」
「それは…」
言い返せなくなり、黙ってしまう。
泣いていた理由…それは
あの時の感情の交差を思い出したからだ。
オーストリアさんを慕い、尊敬し、好意を寄せている感情があった。
自分が女だという事実をまだ受け止め切れていない部分があった。
プロイセンの事を憎らしいとも愛おしいとも思っている不思議な感情もあった。
その苦しさを思い出し、涙を流していたのだ。
ハンガリーは何も言えずに黙ってしまう。
静かな沈黙が2人の間に生まれる…。
次回予告
沈黙のその先の行動は___
「昔の俺と今の私」