姫系クリニックに拘っていたわたしが軍隊系で名高いNACを選んだ理由を綴ります。

あくまで個人の見解です。

悩みや不安が多い不妊治療の中で、ご参考にしていただけましたら幸いです。


第一の理由は、高齢・低AMHに向けた治療を得意としている点です。
どんなに高名な医師が所属していても、通いやすい環境でも、設備が最高であっても、自分のからだに合った治療方針でなければおすすめできません。自分のからだに合った治療を得意とするというのが病院選びの大前提です。



第二の理由は、「女性のからだにダメージを与えない治療」という揺るがない方針です。完全自然周期からスタートして、徐々に、しかも必要最低限の薬の使用にとどめるという点です。
大学病院の通院経験により、高刺激系の不妊治療経験者の癌患者が増加している現実を知りました。寺元先生の「女性のからだにダメージを与えない治療」という言葉が心に響きました。
高刺激のダメージなら知っているという方も多いと思いますが、それは治療中の不調程度だと理解している方が多いように感じます。実際は中長期的なダメージを蓄積します。不妊治療終了後の癌の罹患率は恐ろしいものがあります。まだ若い年齢で発症するので進行が早いという悲しい特徴もあります。
わたしの従兄弟は医者一家です。彼、彼女らをみていると、医者は所属する学会の領域を超えない、他の畑を荒らさないという特性があるように感じます。
癌の治療方法自体の論文は多数ありますが、生殖医療学会の領域を侵す不妊治療が原因というところまではハッキリ言及していないので、不妊治療を受けている人自体が知識を得る機会があまりないのではないかと思います。
しかし、治療の現場では当たり前のことのように語られており、高刺激系に対する不信感を感じました。



第三の理由は寺元先生のスタンスです。不妊治療のゴールは妊娠成立ではありません。出産、しかも母子ともに健康であること。
その後も子育てや人生は続きますが、わたしはまずはそこがゴールだと思っています。
寺元先生も同じスタンスだと理解しています。陽性判定がでても、胎嚢が確認できても、心拍が確認できても、卒業診察の時でさえ、決しておめでとうは言いません。
「卵の力を信じて、まずは戻してみましょう。」なんて死んでも言いません。育つ可能性が低い卵胞を戻すことは女性のからだに大きな負担となります。なかなか凍結できないと、お願いだがら移植してという気持ちになるかもしれませんが、からだの負担を考えたら確信を持てない移植はしないというのが基本なんだと思っています。
移植の基準が厳しいのも同様です。
大切な凍結胚盤をムダにしないこと、からだへの負担を最小限にする配慮だと思います。流産のリスクや負担は想像以上です。
着床しない不安も甚大だと思います。凍結されずに廃棄される方が長い目で見た時にいちばん不安も負担も少ない方法なのだと思います。
NACは移植まで進めば妊娠成立の確率がグンと上がるのは、ムダな凍結、ムダな移植をしないからだと思います。
バンバン凍結してバンバン移植する方が本当は儲かるのにそうしない点に好感をもちました。


第四の理由は、ムダな貯卵をしない点です。
凍結胚を人質にとるような治療をしない潔さと自信、命への考え方に共鳴しました。
バンバン貯卵した方が本来儲かります。



第五の理由は、他院の批判を恐れずにする点です。
普通、医師は医師を悪く言いません。自分が批判されることが不安だからです。医療裁判の難しさもそこにあります。証言する医師をみつけるのが至難の業なのです。ハッキリ言い切る自信と、具体的な理由を述べる点が素敵だなと思いました。
他院の医師は寺元先生の独特なキャラクターなどに何か言ったとしても治療に対しては何も言わないのではないでしょうか。



第六の理由は、男性に当事者意識を持たせて治療に臨ませる点です。
NACの精液検査の基準は非常に厳しく、診察終了後に「俺のせいだったんだね。」という一言を伝える男性が多いと聞きました。
無理矢理男性のせいにしたいわけではありませんが、少なくとも強烈な当事者意識を持つきっかけになると思います。
不妊治療は男性が原因でも、女性が原因でも、どちらが原因か不明でも、女性が必ず痛みを伴う治療を受ける必要があります。
通院調整に心をさき、長い時間を使い、恥ずかしいことも、痛いことも、苦しいことも、色々乗り越えなければいけません。元気な精子がたった一匹だけいればいい男性とは違うのです。



第七の理由は、治療方針を決めてくれる点です。
オーダーメイドの治療とか、患者さまの意思を尊重とか、そんな謳い文句のクリニックは少なくともわたしには合いません。
わたしなんかよりも専門知識がある医師にリーダーシップを発揮して欲しいと思っています。
決定権を患者に委ねて責任から逃げる医師をわたしは信頼していません。



第八の理由は、365日診療です。
患者の自然な周期に合わせず排卵調整など肉体的な無理を強いない、連休と重なるから1周期見送るといった精神的負荷を強いない点がありがたいと思いました。月曜から日曜まで朝早くから毎日いらっしゃる寺元先生には頭が下がる思いです。



色々書きましたが、気持ちが揺れたり迷いが生じた時の自分自身のためにも書き残しました。
上手くいかなくなると、人は、隣の芝が青く見えるものだと思います。

時間の経過への焦りもでてくるはずです。

ここで薬を投与してくれれば…など思ってしまったり、移植までサクサク進むクリニックに行きたくなったりもするのではないかと、自分の弱さを思うと揺れる姿が想像できます。
そんな気持ちの揺れが、そんなに遠くない将来に訪れたら、これを読んで噛みしめたいと思います。
感情ではなく、しっかりと根拠がある理由ができるまで転院せずに信じた治療を受けたいと思います。