朝、
もう2度と鳴ることはないと思っていた元だんな2号からの着信音が鳴った。
『あのさ、結婚指輪どうした?』
『あるよ』
『あれ、オレが持ってていいかな』
『なんで?』
『いつか、オレがちゃんとしたときに
もう一度ちゃんとmi7koに渡したいから』
『わかった』
借金は返しには来ないくせに
仕事帰りにスーツのまま2号はやってきた。
ケースから出し
ふたつを財布にしまった。
『ケースに入れていけばいいじゃん』
『いいよ、邪魔になるから』
『…』
ちゃんとしたときにまた渡しに来るなんて…
嘘だ。
私には金目のものはもう
この結婚指輪しかない。
きっと
2号はこの結婚指輪を売ってしまうのだろう。
私の手元に戻ってくることはないだろう。
一緒に買いにいって
何度も何度も見に行って
悩んで選んだ指輪。
おそろいの指輪をしてるだけで
仕事でイヤなことがあっても
薬指を見るだけで
頑張れた指輪。
私の幸せな時期の指輪。
これは
いったいいくらになって2号の財布に入るのだろう。
いいよ、
どうせ2号がお金を出した指輪。
2号にとって
もうなんの思い出もない指輪。
もう
私たちを繋ぐものは借金のみだね。
いや、もう借金も関係ないか…。
私は
2号が出ていったドアが閉まってからも
しばらく玄関から動けなかった。
2号は
帰り道、私の悲しい顔にも気付かないままで
このふたつの指輪がいくらになるかだけを
考えているんだろう。
『世界で一番mi7koが好き』
そう言ってくれる男は
今の世の中にひとりもいない。