お別れの瞬間 | 神経芽腫の娘のこと

神経芽腫の娘のこと

2017年12月3歳9ヶ月、小児がん神経芽腫と診断され、再発を繰り返しながらも懸命に生きた証、治療や娘との大切な時間をどう過ごしたか、それからの事、子どもを亡くした母親の気持ちを綴っています。2023年2月14日永眠。アメンバー申請の際は自己紹介メッセージをお願いします


【2023年2月14日の出来事】


早朝、主治医も駆けつけて下さり、



受け持ちの看護師さんも出勤ではないのに来て下さり、



娘の様子をみてくれていました。



もう呼吸も脈も不安定。



輸液も輸血も止めました。



いつ心臓が止まってもおかしくない。



このまま、「その時」を待つだけの状態になり、



主治医が、『耳はね、ちゃんと聞こえているから、たくさん話しかけてあげて下さい。



話しかけてあげると、呼吸や脈がパッと上がってますから。』



と、仰り、たくさん話しかけてあげました。



『よく頑張ったね。』と。



この状況で、がんばれ、がんばれ。とは私は言えませんでした。



『がんばってほしいけど、もう、十分、がんばったね。よくがんばったね。』



と、しか言えませんでした。



目一杯褒めてあげました。



そして、『お空にいったら、いっぱいお友達もいるから、寂しくないよ。大丈夫だよ。』



この時、お空にいった史織のお友達10人、全員の名前を初めて娘に伝え、



『みんな、史織の事よろしくね。』



と、心の中で思っていました。



『大好きだよ。ありがとう。』と何度も伝えました。



看護師さん、保育士さん、放射線科のみなさん、泌尿器科の先生。



たくさんの方が最期、娘に会いに来てくれました。



受け持ちさんから、『おじいちゃんおばあちゃんやどなたか会いに来られますか?』



と聞かれ、急いでみんな呼びました。



従姉妹、Uちゃんのお母さん、Uちゃん、Tくんも面会許可をもらいました。



みんなが揃い、納得いくまでたくさんお別れの時間をもらいました。



みんな、たくさん泣きながら、話しかけてあげました。



『がんばったね。』



と。



娘の為に、みんなたくさん涙を流してくれました。



この時、きっと心臓も止まりかけていたか、もう止まっていたと思います。



みんなが十分、お別れができるまで、



主治医はずっと待っていてくれて、



その後、死亡確認を行って下さりました。



主治医の最後の優しさです。



午前11時50分でした。



この日はバレンタインデー。



これも娘らしいなぁ…



この先、バレンタインデーは、忘れられない日になるよね。



これで、もう痛いことはないね。



それが、率直な気持ちでした。



ずっと、そばで娘をみてきたからこそ、湧き出た気持ちだと思います。



「もう治す事は難しい。」



と、告知された昨年の1月から、



いつかこんな日が来ると、



覚悟はずっとずっとしていました。



早かれ遅かれ、いつか「この時」は訪れる。と。



だけど、どこか、まだ大丈夫なんじゃないか。



何年も何年も乗り越えて、病気と共存してくれるんじゃないかと思いたくて、



そんな風に思ったりもしていました。



突然過ぎて、急変過ぎて、



数時間前まで一緒にお買い物をしてたんだよ?



と、この時は信じられなくて、



夢みたい。と。



(今もまだ実感が湧かなくて)



だけど、涙はぼろぼろ止まらなくて。



現実なんだなと、思わされました。



そして、主治医に、



『実は史織、先生にチョコレートを買うと言って、


昨日ケモの後、帰りに買いに寄ったんです。』



と伝えると、主治医も驚いていました。



『ママが代わりに先生に渡しておくね。』



と、娘に話しかけ、主治医に渡しました。



主治医も『しーちゃん、チョコレートありがとう。ちゃんと受け取ったよ。』



と、娘に話しかけてくれました。



そして、みんなには一旦、席を外してもらい、



受け持ちの看護師さんと一緒に身体を綺麗にしてあげ、



再びみんな呼んで、メイクをしてあげました。



帰る支度をし、



『車まで、ストレッチャーで移動されますか?』と聞かれましたが、



それは嫌だったので、



いつものように帽子も被せ、ベビーカーに乗せて、



ブランケットをかけてあげて。



いつものスタイルで、今まで通り、普通に帰るみたいに。



エレベーターの前には大勢の看護師さんが集まって下さり、



外の裏口場所には、血液腫瘍科の先生全員が集まって下さっていて、



大勢の方に見送ってもらいました。



車へ乗せて、(いつものチャイルドシートへ)



自宅へ帰りました。



母子センターの大好きな人に見送られて、お別れできてよかったね。



この日、天気予報は雪ではなかったのに、



この瞬間、不思議な事に突然、雪が降り出しました。