誰がそばにいてほしいか | 神経芽腫の娘のこと

神経芽腫の娘のこと

2017年12月3歳9ヶ月、小児がん神経芽腫と診断され、再発を繰り返しながらも懸命に生きた証、治療や娘との大切な時間をどう過ごしたか、それからの事、子どもを亡くした母親の気持ちを綴っています。2023年2月14日永眠。アメンバー申請の際は自己紹介メッセージをお願いします


娘がこのような状況になって、色んな方に相談に乗ってもらったりします。



話して吐き出す事で、自分の気持ちが整理できたり、



冷静になれたり。



話を聞いてもらったりすると、



当たり前ですが、色んな考え方や答えが返ってきます。



「こう聞かれたら、こう答える。」というマニュアル通りの言葉が存在するのか、



中には、決まり文句のような返事だったり、



仕事だから、その立場だから、話を聞いてくれていたり、



自分の考えと同じだったり、違ったり。



色んな考えの人がいて当然なのですが、



自分の考えに似た方や、その方の考え方が好きだな。



と思える人につい、相談してしまいます。



その人に意見を求めてしまい、背中を押してほしくなります。



中でも、「色んな人を見てきて。」という一般論も大切ですが、



「〇〇ちゃんの事を考えたら。」とか、



「〇〇ちゃんだから。」とか、



「〇〇ちゃんの性格なら。」というような、



娘だったら、どうするか。娘だから、こうする。



という、娘にとって何が一番いいか。と、いうアドバイスを頂くと、



娘の事をよくみてくれているのだな。と、嬉しくなります。



いくら一般論があったとしても、人間、一人一人性格も違いますもんね。



約一年前。娘がこの状況になり、



娘に緩和ケアチームがついたと同時に、



精神科の先生や、心理士の先生もつくようになりました。



心理士の先生は、大阪の病院でお世話になっているので、特に必要ないと思っていて、



こちらから頼んだ訳ではなく、担当医の気遣いなのか、依頼がかかっていました。



今更、初めましての人に、また一から話を聞いてもらうのかぁ。



また関係を築き上げないといけないのかぁ。



ましてや、精神科というデリケートな診療なら尚更。



返ってストレスの時間になってしまうんじゃないか。



と、正直思いました。



だけど、実際話してみないと感じる事も違ってくるかもしれないと思い、



来てもらうようにお願いしました。



案の定、心理士の先生が来られても、毎回のように娘は無視。



結局、質問された内容に私が代弁する事になる。



それに、申し訳ないけれどその方も「仕事」って感じの対応。



こんな時間なら要らない。



と、思いながらも、なかなか断る事ができず、



何度か心理士の先生は来て下さったのですが、



毎回、ぎこちない時間を過ごす事にストレスを感じていました。



娘もあんな態度だから、心理士さんも歩み寄ろうとしない、無難な対応。



もう、そろそろ断ろうとした頃、



外来で娘と待ち合いの椅子で待っていると、その心理士の先生が通りがかりました。



『あっ。』と、私は、思い、挨拶をしようとしましたが、



その先生は、私たち親子の前を素通りしてしまいました。



明らかに、私たち親子がそこに座っていて、



私たち親子だけしか座っていない空間の待ち合いで、



目も合った気がしました。



そして、数分後、再び、私たちが座っているその待ち合いの前を通りました。



だけど、また素通り。



あれ??まさか、娘の事と、私の事も、覚えていない?と、思いました。



たくさん、患者さんを抱えていて全員の事まで覚えられないのは仕方ない事だと思いますが、



何度も来てもらっているのに。



こういう精神科のデリケートな診療なのに、娘の事も覚えていないような方に、



『最近どうですか?悩んでいる事はありませんか?』



なんて、聞かれても、申し訳ないですが、心の内を話せません。



話したくありません。



そう思い、後日、もうその心理士の先生の診察は要らない。と、お断りしました。



娘には、長年築き上げた心理士の先生が大阪にいる。



そんな事があって、



今、この残された貴重な時間の中で、



誰に診て(看て)もらいたいか。



誰に話を聞いてもらいたいか。



誰と過ごしたいか。



誰にそばにいてもらいたいか。



そこを大切にしていきたいと思ったのです。



この心理士さんの話だけでなく、



いくら勉強をたくさんされて、専門的な立派な資格を持たれて、肩書きがたくさんあっても、



「資格をもっているだけ」では…。と、思ってしまいます。



偉そうに言ってすみません。



私も専門職だったので、そのような経験があります。



今まで築き上げた信頼関係がないと、



立派な資格も活かされない場合もありますね。



あとは、何となくの相性。



人と人なので、時間もかかる場合もあるし、なかなか難しい事なのですが、



「娘の事を考えた上で」という意見を頂くには、



その人との今まで積み重ねてきた関わり方や、信頼関係が大切で、



いきなりパッと現れたような人には、今このデリケートな状況で、深いところまでは難しい。



誰がそばにいてほしいか。



慣れた場所で、慣れ親しんだ人がいて、



娘も私も、そんな、そばにいてほしいと思える人がいるところで治療を受けたいと思いましたが、



そんな事を言ってられる状況ではなくなってしまいました。



娘の望むことをしっかり再確認しながら、



娘にとってどの選択が良いのか。



今後のこと。



一緒に決めていこうと思いました。