インフォームド・コンセント | 神経芽腫の娘のこと

神経芽腫の娘のこと

2017年12月3歳9ヶ月、小児がん神経芽腫と診断され、再発を繰り返しながらも懸命に生きた証、治療や娘との大切な時間をどう過ごしたか、それからの事、子どもを亡くした母親の気持ちを綴っています。2023年2月14日永眠。アメンバー申請の際は自己紹介メッセージをお願いします


2022年10月


チームリーダーの先生とのICがありました。





主な話は、私が迷っている次の治療の話。





先生は、カルテを見ながら、





『今の治療は、一週間入院で、三週間も家に帰れていて、





骨髄抑制もなく、輸血も要らない。





そして、ある程度コントロールできている。





すごく、いい治療ですよね。





正直、僕はこの弱い治療で、ここまで繋げられると思っていなかったんですよね…





イリノテカン、テモゾロミドはそんな劇的に効く薬じゃないし、





昔にもやった事がある薬だから。





アバスチンを加えるだけで、こんなに違うのか。





と、正直驚いています。





だから、〇〇ちゃんはアバスチンが効いてるんじゃないかなぁ。





と、思っているんですよね…





それに比べると、TCは、やっぱり骨髄抑制がかかるし、





好中球も0になるし、輸血も必要。





入院期間がよめない。最短でも20日前後入院しないといけないんじゃないかな。





今の〇〇ちゃんにとって、入院の期間が長いのって、





僕はね、違うのかなってね。。





やっぱり、1日1日が大切な時間だから、





家で家族や友達と過ごす時間を奪うのはね。。





もちろん、今回の再発でTCをやっていないから、





どうしてもやってみたい。という強いお気持ちがあるならやります。





だけどTCはITに比べて、何回も何回も続けて出来る治療ではないのでね、





迷われてるなら、今の治療を続ける方がいいんじゃないかなってね。僕は、思うんですよね。。





みんなが言う通り、今回は予定より一週間遅れたのも痛みが出た要因かもしれない。





この場で決めなくても構わないので、またお返事聞かせて下さい。





それから、やっぱり〇〇ちゃんは、ここで治療する事を希望されていますか?





家から遠いしね…大変じゃないかなって。





いや、もちろん、全然ご希望があるなら、





ここで治療受けてもらって構わないんですよ。』





と、聞かれました。





『娘は、ここの病院の先生や看護師さん、院内学校の先生たちや、環境が好きなんです。





まず、転院してきて、付き添い者も一緒に病室でご飯が食べられる事に驚いて、





「ママも一緒に食べてもいいの?!」





と。





前の病院は、決まりで、付き添い者は病棟に出て、控室で食べないといけなくて、





食事の時間は別々だったんです。





お母さんが食べてるものを食べたくなって、





病院食を食べなくなるんじゃないか。






他の患者さんへのにおいの配慮や、感染対策。






という理由も込められてるそうで。





しんどがっているこどもを、自分の食事の時間の為に、数十分、一人で待たせないといけないし、





早く戻ってあげないと。と、付き添いのお母さんたちはみんな、急いでご飯を食べる生活でした。






行かないで。って言われる日もありました。





そんな時は、心配で、自分のご飯なんて食べれません。





だけど、私は、食事の時間って、





毎日の事だから、生活する上で、けっこう重要なことじゃないかなって、





一緒に、これ美味しいね。って食べる事って、幸せな時間だと思っているんですよね。





前の病院は、それが頑なに、禁止されていて、ここみたいにキッチンもないし、





食べたい物も作ってあげれない。





ちょっとなんか辛いなって…





もちろん、それだけの理由ではないですけど。





前の病院にも良いところはありますし。





アバスチンは、ここでしか使えないっていう理由もありますし…』





と、伝えると、





『その決まり、厳しいですね…笑





僕もそれはお母さんと同感ですね。





生きていく上で、食事って大事ですよ。





一緒に食事をとるっていうのも大切です。





僕たちも、仕事でも食事の場で関係を深めていく事も多いですからね。





そんな毎日、親子が離れ離れで食事をとる生活は辛いですね。寂しいですよね…





治療場所は、全然、〇〇ちゃんの希望に添えますのでね。





遠方だから、どうかなって再確認しただけです。





ここの病院のキッチンも、重要な役割りをしていたんですね。





勉強になります。』





と、ICは終わりました。





この先生は、治療も大切だけど、





それよりも、本人にとって何が一番良いのか。





その裏の背景までも、いつも考えてくれます。





残念ながら、今の状況は、治す事が難しい。





だからこそ、どのような環境で、どう時間を過ごすべきなのか。





先生も諦めとかいう発言ではありません。





きっと、色んな人の最期をみてきたからこその、言葉なのでしょう。





有り難く受け止めます。





私は、今の娘にとって、大切な事を見失いかけていました。