※当記事は、理論上の話を展開しているため現実的ではないと感じる部分もあるかもしれませんがご了承下さい。

 

 

 

 

FXとは、通貨を適切なタイミングで売買することで、為替レートが変動した時に利益を出すことを目的とした金融取引だが、これには自動売買ツール(以下EA)というものがある。

 

 

 

つまり、どこのタイミングでポジションを持つ=通貨を売り買いするかをあらかじめプログラムしておけば、あとは稼働させておくだけでパソコンの前に張り付いて自分でチャートを確認していなくても、コンピューターが自動で通貨の売買を行い利益を出すために動いてくれるシステムのことだ。

 

 

 

実際、スキャルピング=数秒単位の一瞬の価格差で利鞘を稼ぐ手法は人間が操作するよりもコンピュータにやらせた方が正確であるため、自作のEAを使って取引をしている投資家(というか投機家)は多くいる。

 

 

 

 

ただ実際は、プログラムを組むには相応の知識とスキルが必要であるため、素人が一朝一夕で作れるものではない。

そのため中にはネット等で一般に販売されているツールを購入して自分のFX口座に組み込み、儲けようとしている怠け者もそれなりにいる。

 

 

 

 

 

ただ問題は、僕が思うに、ネット等で一般販売されているEAは理論上絶対儲からないということだ。

 

 

 

 

 

これは、「巷で売ってるEAなんて所詮詐欺みたいなものだから」という、EAそのものに対する不信感からではなく、絶対儲かるEAだとしても絶対儲からないという自己矛盾を抱えているからだ。

 

 

 

 

どういうことかというと、例えば、勝率95%の超高性能なEAが売られているとする。

つまり、これを買うだけで理論上ほぼ確実に儲けられるということであるが、そんなものがもし一般に販売されていたら、あなたはどうするだろうか?

 

 

 

おそらく、多少の借金をしてでも絶対手に入れたいはずだ。

それを手にいれることができればほぼ確実に儲かるのだから、借金はそれを使って稼いだお金返せばいい訳だし、そのあとはEAをただ稼働させておくだけで寝ている間も、バカンスをしている間も、毎日あなたのFX口座にはお金がどんどん貯まっていくことになる。

 

 

 

つまり、一生働かなくてもEAが稼ぎ出したお金で食べていける、夢のような生活が待っている。

 

 

 

そんなEAが存在すれば、僕だって欲しい。

 

 

 

 

つまり、それだけの勝率を誇る素晴らしいEAが本当に存在すれば、この資本主義社会を生きている世界中80億人全員がそれを欲しがるはずだ(例え共産主義国の住人であっても)。

この情報化社会において、情報は瞬時に世界と共有されるため、一部の人がそのEAの存在を秘密にしようとしても一般販売されている以上いつかは世間に知れ渡ってしまうだろう。

 

 

 

すると、何が起こるか?

多くの人がこぞってそのEAを購入し自分の口座と連携させて稼働させた場合、彼らは皆同じEAを使っているのだから当然売買タイミングが同じになる。
 

 

 

つまりそのEAが出す注文は、それを保有している全員から全く同じタイミングで為替市場に向かって放たれることになる。

 

 

 

 

そうなると、何が起こるか?

 

 

 

結論から言うと、早いインターネット回線を持っている人が勝つゲームへと変化する。

 

 

 

 

みんなのEAから同時に注文が市場に向かうため、その注文をいち早く市場に突入させることができた人、つまりそれだけ早いインターネット回線を持っている人が勝利する。

 

 

 

 

その後、注文が続々と市場に突入するに従って、為替レートは、例えばその注文がドル買いの注文なのであればドルが上昇する。

 

 

 

ネット回線がそれほど早くなく、したがって注文が市場に届くのが遅かった人は、ドルが上昇した後に自分のドル買い注文が市場に届くことになるため、結果EAが望んだ価格よりも割高にドルを掴まされることになる。

 

 

 

 

 

話をわかりやすくするために、ダイヤモンドで考えてみよう。

 

 

 

例えば、ダイヤモンドの売買タイミングを的確に教えてくれるアプリがあるとする。

 

 

 

だがアプリの噂が広がり、それを皆がインストールし始めると、アプリからの「今、ダイヤモンドを買いなさい」という通知は、それをインストールしている人全員に同時に行き渡る。

 

 

 

それを見た人たちは、我先に宝石店へとダッシュする。

 

 

一番に宝石店へ入店できた人は、現在の価格でダイヤモンドを買うことができるが、2人目、3人目、4人目・・・と宝石店でダイヤモンドを買い求める人が次々に入店してきた場合、需要過多のためダイヤモンドの価格は上がり、1000人目が来た頃には、ダイヤは元の水準からかなり割高になっているだろう。

 

 

 

つまりこの場合、最も足が早い人間=宝石店にいち早く突入することができる人間が最も得をする。

 

 

 

 

 

 

これと同じことが、EAでも起きるだろう。

 

 

 

 

つまり、巷で誰でも購入可能なEAというのは、それが絶対に儲かるものであったとしても、理論上儲けることは不可能に近い。

 

 

 

まだそのEAを使っている人が少ない段階では問題ないが、噂が広がり、そのEAを多くの人が使い始めた場合、同じタイミングで出された注文はインターネットを経由して市場に届くまでの時間が短いものから順に突入することになるため、超高速インターネットを持っている人が勝利することになる。

 

 

 

 

「自分のインターネットはそこそこ早いから大丈夫やろ」と思う方もいるかもしれないが、世界には1/1000000000秒早いインターネットを手にいれるために何千万円もかけて回線工事を行う超高速金融取引業者が多く存在する。

 

 

 

 

 

この理論は、優れたEAが多くの人の手に行き渡ることを前提にしており、もちろんそんなEAだからといって為替レートに影響を与えるほど多くの人間の手に行き渡るかどうかは疑問ではある。しかし、半年ほど前に米オープンAIが出したChat GPTがこれほどの速さで世界に広まったのを見ると、すばらしいツールというのは瞬く間に人々の手に行き渡る時代であることをしみじみと実感する。

 

 

それほどに皆の情報感度が高い証拠だし、特にお金儲け系の話題は拡散されやすい。

 

 

 

 

そもそも巷でEAを販売している人たちは、自分でそれを使うよりも売った方が儲かると判断しているから一般販売しているわけである時点で、本当に高勝率なEAが一般販売されるなんてことは起こりにくいのも事実だ。

 

 

 

 

したがって、勝率95%のEAを自力で開発し、自分で勝手に使っている人は何も問題ないのだが、楽して儲けたいからと「勝率80%超え!!数ヶ月で億万長者に!!」などと謳って販売されているEAを買ってしまう人は、万が一その謳い文句が正しいのだとしても、理論上それで持続的に儲けることは不可能なのだ。