かまち、おまえは

人に好かれるか好かれないかということで

生きているのではなかったはずだ。

おまえは、生きる。

ただ自分の生き方を貫く、

それひとつだけのために。

おまえは裸。

たったそれだけ、おまえの心しか

この世にはない。

おまえの生き方を貫く。

消えるまで、生命が消えるまで、

全ての力を出し切って、生ききる。

それがおまえの生き方だ。

おまえの生き方を貫け、

それは意地ではない。

美しさだ。

今までは人の言うことを聞きすぎた。

みじめな気持ちになり、

仲間が欲しくなり、

ろくでもないやつを仲間だと思い込む。

そこからおまえがくずれていく。

山田かまち「生きる」より

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緑が夏の訪れを感じさせる季節。満開の茨の花がひときわ鮮やかに咲き誇っているのを見つけました。茨(イバラ)は、野茨(ノイバラ)とも野薔薇(ノバラ)とも呼ばれます。

枝や葉に鋭い刺があることから、困難な状況や苦難の多い人生を喩えて「イバラの道」なんて言いますね。山の中でも、押し合うように咲きこぼれる白花に出会うことがありますが、うっかり傍に寄ろうものなら、傷負いますからご注意です。

「イバラ」ときくと思い出す、古い詩画集があります。山田かまちの『悩みはイバラのようにふりそそぐ』。

高崎出身の詩人なので、関東に近い同世代の方なら、ご存知の方もいらっしゃるのではないかしら。

手にした当時は十代でしたが、悩みもつきぬ多感な頃、『悩みはイバラのようにふりそそぐ』というタイトルを見た時の衝撃、「感電しかねぬ」と身にはしった緊張、汗にまみれた夏の匂いは、今も鮮明に思い出されます。

そんなひりひりした印象を与える、イバラという名とは裏腹に、花は精廉清浄と呼ぶにふさわしい純白。五枚の花弁の向こうからは、ほのかな香りが漂うという二面性。

イバラ、と呼ぶよりも、野バラ、と呼んだ方が、親しみがわきますね。このように、同じ花でも互いに傷つかぬよう距離を置きたくなる名と、芳香を求めてそばに寄りたくなる名があり、それぞれに印象も違って見えてくる。趣ふかい花だなぁ、と思います。

それにしても、初夏に見る白花の美しさといったら、格別です。今日もいちりんあなたにどうぞ。

ノバラ 花言葉「素朴なかわいらしさ」

花の画像のようです

~花以想の記~