【SS】赤鼻とアケオメ・ミルクティ | Happy Ending Syndrome

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終わりよければすべてよし。

 
赤鼻とセイント・ミルクティ』フライングゲットな番外編

::赤鼻とアケオメ・ミルクティ


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「のりくん。お願い事をする前に、去年はありがとうございましたって神様にちゃんとお礼言ってね」


新年を迎えた朝、ふたりで初詣でに訪れた小さな神社の本堂前にて。
今まさに賽銭箱に500円玉を投げ入れようとしていたとき、胡桃さんがいきなりそんなことを言ってきた。

え、あ、はい、なんて間の抜けた返事をした俺に、彼女は桃色に染まった頬をぷう、と膨らませてみせる。

「む、今アホらしいって思ったでしょ」

「お、思ってませんよ」

「お礼もなしに願い事ばかり聞いてたら、神様だって疲れちゃうんだよ?」

胡桃さんが放り投げた賽銭が、チャリンと音を響かせて。
その余韻を辿りながら、目を閉じて本堂に手を合わせる彼女の横顔を眺めていると、不思議と和やかな気持ちになってきて。


(……かわいいなあ)

疲れちゃう、って。
優しい。胡桃さんは誰にでも、たとえ神様にだって。

かわいい。愛おしい。
俺の肩より低い身長も、寒いと赤くなる鼻先も、無邪気な笑顔も、ぜんぶ、ぜんぶ。


――ずっと、こうしていられたらいいのに。


いつまで一緒に働けるだろう。……そんなことを考えながら、俺も賽銭を投げて手を合わせる。

(神様、去年はどうもありがとうございました)

そして願わくば。


願わくば、――





「胡桃さんは、神様に何をお願いしたんですか?」

帰り際に、ふたりでおみくじを引いて。
幾重にも折り畳まれたそれを、かじかんだ指で少しずつ広げていけば、

「ふふ、ひみつー。……あっ、わたし大吉だ! のりくんは?」

にこにこと楽しげに微笑む胡桃さんの首に巻かれた、ミルクティ色のやわらかなマフラーの裾が、ふわりと揺れた。


(……あ、)


思わず頬を緩めた俺の顔を、胡桃さんは首を傾げて見上げてくる。

「どうだった? 大吉?」

「んー、ひみつです」

ええー! と大袈裟に声を上げる彼女。俺は笑った。


ひみつだよ。今はまだ。
願い事が叶うまでは。

だからそれまで待ってて。

いつか俺の口からちゃんと言うから、待っててください、胡桃さん。



ーENDー