術翌朝、主治医が回診に来た。
えー
簡単に言わないでよペースメーカーだよ！簡単なものじゃないよ！きっと生活も一変するよ！
大丈夫大丈夫！ペースメーカーは必要ないよ！何かあればそれも運命さ！
手術は問題なく終わっている。
なるべく早く歩けるようになること
動かないと癒着の心配があるらしい
立って下さいと言われ
と言われ必死で立とうとするが、体を動かすだけで痛い
腹腔鏡ではなく開腹手術をしたので傷が大きく、痛すぎてお腹に力が入らない
傷口が開くんじゃないかというくらい痛い
歩けるようにならないとトイレにも行けないので導尿カテーテルを抜いてもらえない
必死に立とうとするが途中で、クラクラして気分が悪くなった
歩行練習中止
術後すぐできっと貧血気味なんだ！
落ち着いてから再びチャレンジ
歩けないと帰れない
激痛に耐えながらどうにか歩けた
私、歩けてますよ〜
を、アピールする為にナースステーションの前をウロウロと歩行練習する
でも、誰も見てくれない
それどころではなかったようだ
昼過ぎに、循環器の医師、看護師がぞろぞろと4人私の所にやって来た
そして、ドラマのセリフのような言葉を投げられた
今すぐ、ご家族を呼んでください
え
何ですか
何かあるんですか
私、何かおかしいですか
術後の私の体は、心電図で24時間モニタリングされている
歩行練習の際、気分が悪くなった時、不正脈があったらしい。
夜中、睡眠中にも何度か不正脈があったらしい。
脈が少なくなる時がある、徐脈らしい。
そして、浣腸の時に倒れたこと。
材料がそろってしまったようだ
心臓に疾患がある可能性があります
突然死してしまう恐れがある
もし、階段などで意識を失ったら命にかかわる
今すぐ、ペースメーカーを入れる手術が必要です
頭が真っ白
思考停止
あの〜
私、バレーボールしてるんですが、また、できるようになれますか？
仕事に復帰できますか？
いつごろ家に帰れますか？
訳の分からない質問ばかり出てくる
プロのバレーボール選手なんかじゃなく、ただの趣味のママさんバレーをしているだけなのに
仕事はただのパートだし
とにかく、激しいスポーツをしているけど、今まで心臓は、何ともないし、元気ですよ
ペースメーカーは不要ですよ
をアピールしたかった
そして、
私、倒れたのは今回が初めてではないんです
生理痛が酷すぎて、激痛に耐えきれず、トイレで倒れていた事があります。
胃腸炎で胃が痛すぎて、痛みに耐えきれずに、意識を失っていた事もあります。
過去に3回ほど、気を失った事がありましたが、どれも痛みに耐えきれずに意識が飛んだだけで、大丈夫です
心臓は大丈夫です
と、必死に大丈夫アピール
しかし、火に油だったのか
気を失う事がそんなにあるなんて、やっぱり異常があるのかもしれないとなってしまったのか
では、一時的に小さい装置を心臓に留置する手術をします。ペースメーカーの役割をしてくれる装置で、首の血管から入れて、管を首に留めておきます。
それは、１週間しか置いておけなくて、早く取り出さないと感染症の恐れが出てきます。
そして、その１週間で、いくつかの検査をします。
検査の結果、ペースメーカーが必要となれば、このまま、手術をします。
入院も長くなります。
異常なしなら、管を抜いて、終わりです。
と、なった。
大変だ
どうしよう
死にたくはないが、ペースメーカーを入れるとなると、色々な制限があるだろうし
何より、入院が長引く
早く帰りたい
仕事は辞めないといけない？
私、どうなるの？
どうすればいいの？
神様、教えて下さい
とにかく誰かに来てもらわないと
旦那はその日仕事で遠方に行っており、連絡をしてみるが、すぐには来れない
年老いた両親に来てもらうわけにはいかない
逆にビックリさせてしまって、心臓に悪い
少し前に弟夫婦がお見舞いに来てくれたので、まだ近くにいるかもと思い、連絡してみた。
すぐ戻ってきてくれて、一緒に話を聞いてもらった。
弟の嫁は看護師
こんな時、頼りになる
弟夫婦は、医者が言ってるんだから、やってもらうしかないだろうと。
簡単に言わないでよ私はどんな言葉を求めているんだ？！
自分の心さえ、もうわからなくなってきた
誰か助けて
助けて旦那も仕事を切り上げて、来てくれた。
しかし、相談するも、
俺、どうしたらいいかわからん
頼りにならない
こんな時、
家族の為に命を守る事を考えて欲しいから、医者の言うようにして欲しい！
おかあに何かあると困る
とか、言えないのかな？
来てくれたのは有り難いけど、意味ないやん
私は、医療関係の職場で働いていて、そこの先生がこの病院を紹介してくださった。
先生なら何と言うだろう？？
聞けないしなぁ〜
決断できないまま、同意書にサインする為に、旦那と相談室へ向かう途中、エレベーターホールの前を通りかかった。
その時、なんと、エレベーターからその先生が、降りてきた
なんというタイミングで
奇跡だ
神様だ
後光がさしていた
奥様と一緒にお見舞いに来てくださったのだ
先生に全てを話した。
この機会に、しっかりと検査してもらったらどうですか？
その一言で、私の気持ちは固まった
弟夫婦にわざわざ戻って来てもらったのに。
ゴメンナサイ
同意書にサインをし、夕方からその手術は始まった。