みなさん、おばんです。

 

 首領様の声が出てくる謎の四角い小さな機械、ソニーのウォークマンですが、ソレを凝視しスパイになることを承諾したパク・ナムルは乾いた上唇を乾いた舌で舐めました。カサっという音がして、パクは自身の緊張を自覚し、さらに緊張の度合を増すようでしたダ。

 

 『OK?マジで?良かったー。断られたらどうしようかと思ったー。ボクの意思とは無関係に党の方針で処罰せなアカンとこやったー。マジ助かったわー♪』

 

 党の幹部はパクを見て微笑みました。パクもソレを見て微笑む努力をしましたが顔が引きつってうまく笑えませんでしたダ。

 

 『んじゃ、一応言っとくけど、キミやキミの協力者とかが捕まったりして殺されても、党は一切関与しないからね。自己責任ね。そこんとこヨロシク。OK?』

 

 パクは本心とは裏腹に、またしても「OK」と快諾してしまったダ。

 

 『良かったー。ここまで話してキョヒられたらボクの意思とは関係なく党の方針でキミがココに居ないことになるとこやったー。マジ良かったわー♪』

 

 党の幹部はパクを見て微笑みましたダ。パクに微笑み返しを求めているのでしたダ。パクはソレを察して、微笑み返しを試みましたがうまく出来ませんでしたダ。

 

 『なお、このテープは自動的に爆発するよ。1、2、3」

 

幹部「バーン!!」

 

 パクはビックリしてのけ反りましたダ。幹部は首領様を称えるように拍手しましたダ。 

 

『ウソだピョーンヤーンジョーク!キムウィルソンでしたー』

 

 窮屈そうな音を出してテープが反転し、『こんにちは、キムだよ・・・』と繰り返し音声が流れたところで、幹部はウォークマンの停止ボタンを押しましたダ。

 

幹部「さっそくだが、キミはこれから、コレを持って、新しい人生を始めてくれたまえよ。パックン。いや、うんと、コレ、何て読むだな?」

 

 幹部はパクに中国のパスポートを渡しました。自分の顔写真がハメられた隣に、アルファベットで書かれた名前をパクは小さな声を出して読みあげました。

 

パク「LieDou Lou ルゥ・リィドゥ?」

 

幹部「そうだ。キミはこれから、ルゥだ。これから、臨時列車で、北京まで行ってくれまえだ。さあ、急いで。間もなく出発するだな」

 

 幹部に急かされ、パクはわけがわからず、平壌発北京行きの臨時の特急列車に乗り込だのダ。