皆さんおばんです。

 

長い夢から覚めたわたしは、またしても、わたしがわたし自身のことを何一つ知らないことに気付かされたのです。そうして、そのことを考えると、ドカドカうるさいR&Rバンドが頭の中で演奏し始めて、ズキズキガンガン頭痛を引き起こすので、自分のことを考えるのはやーめた。

 

というわけで、わたしは常に他人のことばかり考えているのでした。

 

そういえば、レラ・サンを飲み込んだままナイキに海へ突き落とされた鎌田さんは大丈夫だろうか?って死んでるか、しょうがねーな。

遅かれ早かれ、ん?、早かれ遅かれ?どっちでもいいけど、誰でもいつか死ぬのだ。

R・I・P鎌田ミノル、そしてレラ・サン。

 

2人とも、いや、一人と一匹とも、天国で待っててね。俺もすぐ行くぜ。けど、天国で会えるかどうか、わからんな。天国っていっても、広いんじゃね?待ち合わせ場所とか決めとけば良かったな。鎌田さんの連絡先も知らないし…とボンヤリ考えて、わたしを呼ぶナイキの声も耳に入りませんでした。

 

ナイキ「おい!」

 

わたしは我にかえり、妄想から戻りました。

 

わたし「何ですか?」

 

ナイキ「その、タッパーに入っとるのは、ほんまにカレーがか?」

 

わたし「カレーでしょう。どう見ても」

 

わたしはタッパーのフタを開け、ナイキに見せました。

 

ナイキ「ふーん、まあ、そうじゃな。匂いはあまりせんが…」

 

わたし「凍ってるからじゃない?」

 

ナイキ「凍ってると、匂いがせんがか?」

 

わたし「一般的に、そうじゃない?」

 

ナイキ「一般的に、凍ってると、匂いがせんがか?」

 

わたし「だーかーらー、匂い立つとか、立ち上る熱気とか言うでしょ、アレと同じように、熱によってその匂いが移動したり充満したりするんでしょ。熱が無ければ、こうやって鼻を近づけるとかしなければ…ありゃ、ホントに匂いしねーな」

 

ナイキ「おんし、それ、食うてみんしゃい」

 

わたし「だーかーらー、まだ凍ってるって。カチンコチンだって」

 

ナイキ「凍ってても食えるじゃろ」

 

わたし「食えねーよ」

 

ナイキ「食える!カレー味のアイスだと思えば」

 

わたし「んなもんねーよ」

 

ナイキ「無いことナイキ!」

 

わたし「何だこいつ…」

 

わたしは渋々、ナイキの要望だか指示だか命令だかわかりませんが、凍ったカレーを食べるべく、スプーンを取りに台所へ向かいました。といっても、狭い閑居の、数歩先にある、ガスコンロ一つ置いてある流し台のことですけど、それに備え付けの引き出しをガチャガチャあさってスプーンを見つけました。しかし、いざそのスプーンを取り出そうとすると、思いのほか、重い。そうです。実際に、物理的な重さを感じるのです。ずっしりと、指先で持ち上げるには不可能な重さなのです。わたしが知るあのスプーンの重さとは違う別次元の重さ、つまり違う重力がかかっているかのような重さなのです!

 

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