皆さん、おばんです。

 

ボクは薄れゆく意識の中で「YES」と言った。つもりだった。実際は、ボクの「YES」は水の中では音声に成らない、口からもれた泡ぶくみたいなものだった。しかし、ボクに生まれ変わりのチャンスをくれた人は、いや、その声の主は、ボクの水に溶けた「YES」を聞き取った。

 

OK!よく聞けよ。お前は、あの世に入らなければ、この世に戻ってこられない。つまり、お前は、一旦、この世から出て、あの世に入り、あの世を出て、またこの世に戻る。これが生まれ変わるということだ。これが生まれ変わりの正しいプロセスだ。これ以外に生まれ変わる法は無い。これからオレの言う言葉をリピートするんだ。死ぬ間際に。その瞬間に。

この言葉はあの世のドアを開く鍵だ。あの世のドアは常に閉まっているんだ。オートロックさ。そのドアを開くにはキーワードが要る。その言葉をお前に授けるぜ。用意はいいか?

 

ボクは「YES」と言った。と、アタマの中で想った。そして、その瞬間の頃合を見計らって、声の主は、ボクが繰り返すべき言葉を放った。

 

マハリク!       「・・・マハリク」  

マハリタ!       「・・・マハリタ」  

ヤンバルクイナ!  「・・・ヤンバルクイナ」

 

OK!よく出来た。お前、ちゃんと死んだか?  「・・・・」

 

よし。死んだな。これから後の、あの世のことは、現地のコーディネーターが案内してくれるだろう。よろしくベイベー!!

 

というわけで、ボクは、本当に、死んだ。その時のボクはね。

 

それからボクは、その生まれ変わりの呪文を死ぬ間際に唱えることによって、何度も生まれ変わってきたんだ。 

 

マハリク マハリタ ヤンバルクイナ

 

もう死ぬことは怖くない。ボクが、キミや、その辺に居る奴等と違うのは、ソコだけなんだ。いや、それ以外の違いはどうでもいいんだ。ボクだけが死の恐怖から自由な人間なんだから。ボクだけが不死なんだから。