皆さん、おばんです。
デーモンはパレスチナ難民の３世。敬虔なイスラム教徒。そのバックボーン以外、他の同じ年頃の、アメリカ人の青年との大きな違いは、無い。アメリカ生まれのアメリカ育ち。アメリカしか知らない。ごくごく、一般的な、普通の、ムスリム。
アンジーがデーモンと知り合ったのは、ハイスクールの１年生のとき。クラスは別だが、ボランティアサークルで仲良くなった。エキゾチックな顔立ちが目を引いた。アジア系の雰囲気に親近感が湧いた。
アンジーの父方の祖母は日本人。彼女は会ったことがない。占領下の日本に駐留していた祖父が、日本人の祖母と知り合い、結ばれ、アンジーの父が生まれ、それから、２人は別れた。祖父は、父を連れて、アメリカに帰った。何で別れたのか。祖母を日本に残して。何故、父だけをアメリカに連れ帰ったのか。父は、何も知らない、らしい。その理由を。写真も残ってない。だから、アンジーは日本人の祖母を想い描く。かわいそうなグランマを。
トランプウォールに寄りかかりコカインを吸引するアンジーとデーモン。
デーモンはアンジーの肩を抱き寄せ、彼女の耳元に、ささやいた。
リアルって、何だ？
え？何？
リアルって、何だと思う？
