皆さん、おばんです。

 

暗い海の底から月の光が映る漆黒の海面に、瀕死のオネエがプッカリ浮かび上がりました。

 

鎌田さんとその腹の中にいるレラがハンマーヘッドシャークの頭に乗せられて生還を果たしのです!と喜ぶのはまだ早い。一生分の海水を飲み込んだ鎌田さんは意識を失い、その海水に浸された淡水魚たる金魚のレラも万事休す!な状況なのです。

 

H・H「さあ着いたよ!君の姿を見せてくれよ!」

 

レラ「わかった。ちょっと待ってて」

 

鎌田さんからの脱出を試みたレラは胃から食道を通り咽頭に昇ったところで行く手を遮られてしまいました。まさに閉店ガラガラ!の向こう側、口腔内に出ることが出来ないのです。

 

レラ「(ヤバイ、ヤバすぎる。海水に浸され続けて身体がサビてゆくような気がする・・・けど、実際サビてないし、身体も動く。呼吸もスムーズだ。わたしのエラは自由だ。人間の手足同様、思うがまま動いてくれる。気のせいだ。そう。何となくそんな気がしていただけなのだ。金魚が海水の中では生きられないなんて。わたし自身が限界をつくっていただけなのだ。わたしはどこでも生きていける。わたしは夢を司る金魚なのだ。しかし、この男の体内から脱出しなければどこにも行けない。この男はもうダメだろう。使えない人間ばかり寄ってくる。さすがのわたしも自ら出向いて自分を飼ってくれる人を選ぶということは出来ない。偶然に賭けるしかない)」

 

H・H「ねぇねぇ、何をブツブツ言ってんのさ?早く出てきなよ。姿を見せてくれる約束じゃん。もしかしてハズいの?ルックス、自信無い?いいよ。期待してないよ。この期に及んでもったいぶるなよ」

 

レラ「出れないのよ。この男のノドが開かないのよ」

 

H・H「なんだよ。早く言ってくれよ。ノド、噛み切ってやるよ。ちょっと下がってて」

 

レラ「ダメ。ゼッタイ!」

 

H・H「なんでだよー!」

 

レラ「血が流れたら、お前たちを興奮させてしまう。他のサメも寄ってくるだろう。わたしには手におえない」

 

H・H「心配スンナよ。ダイジョブ、ダイジョブ、スティーブ・ジョブズ!」

 

レラ「スティーブ?」

 

H・H「そこ?・・・じゃあ、どうすんだよ。こいつの身体が自然に朽ちるのを待つのかい?ソレまで君はコイツの中で生きていられるのかい?」

 

レラ「難しい問いね。そうね。内側から開けられないのら、外側から開けるしか方法がないわね。お前に出来る?」

 

H・H「出来っこないよ。人間の身体をガツガツ食うのはアサメシ前だけど、人間のノドを開けさせるなんてサメの仕事じゃないよ。救急車呼べよ」

 

レラ「出来る!出来るわお前なら。いいえ。お前達なら。お願い。わたしを助ける夢を見て!」

 

ヂャーン!

 

という効果音が鳴ったかどうかはわかりませんが、そうしてレラが念を飛ばすと、H・Hの群れは鎌田さんを蘇生すべく救命活動を始めたのです!