皆さん、おばんです。

 

わたしの秘密?ナイキが言うわたしの秘密とは一体何だろう?

 

またしてもわたしは何気なく発せられた他者の一言に心をひどく揺さぶられ自身の出自をめぐる謎の迷宮の中に入り込んでしまったとです。というのは大げさだけど、わたしは私自身の事を何一つ知らないことに今更ながら気付かされたのです。

 

そういえば、レラ・サン(サーカスの妻の金魚)を飲み込んだ鎌田さん(ジョンの友達でオカマの警備員)は大丈夫かな?この大海原に救命胴衣も着けず放り出されて大丈夫なわけないか。アーメン。鎌田さん。天国で会おう。といっても、天国って広いんじゃね?待ち合わせ場所とか連絡先聞いとけば良かったな・・・。ウっソでーす!俺は天国には行けましぇーん!

 

鎌田さん、俺はあなたのようには到底、生きられないよ。いや、あなたのように死ねないよ。俺は天国への階段を昇りきれんとです。そうするには、俺はショボ過ぎるとですたい。

 

と、わたしが感傷に浸っていたときも、鎌田さんは自分の胃の中の金魚に励まされてなんとかかんとか太平洋沖を漂っていたのです。何たる奇跡!何たる不思議!

 

シンクロナイズドスイミングのお姉さん顔負けのユラユラ立ち泳法で必死に溺れまいとする鎌田さん。不幸中の幸いか海は凪いでいて、夜空の星たちが人間の幸不幸をシカトして賑やかにキラキラ瞬いております。

 

鎌田「ぶはっ!もうだめ!体力の限界よ!」

 

レラ「頑張って!あなたが死ねば、わたしも死ぬのよ!あなただけが頼りなの!」

 

鎌田「そんなこと言われてもー困るー」

 

レラ「お願い!わたしをナツハル(サーカス)のところに連れて行って!」

 

鎌田「何言ってんのあんた!この状況わかる?泳げないのよわたし。溺れかかってるの!」

 

レラ「泳げるわ。あなたならきっと泳げるようになる。いい?まず、仰向けになってごらんなさい。落ち着いて。体の力を抜きなさい。そうしたら、ほら、自然と体が浮くでしょ?」

 

鎌田さんはレラのレクチャーどおり身体をソラに向けてバランスを取り、プカプカ浮かぶようになりました。

 

レラ「どう?簡単でしょ?」

 

鎌田「うん、楽になったわ。けど、このままずっと、てわけにはいかないでしょう?これからどうするの?このまま死ぬまで海を漂うの?」

 

レラ「だから、泳ぐのよ。その練習をするのよ。休み休みでいいから。ね?」

 

鎌田「ぶはっ!鼻に水入るー!もう、一生分の海水飲んじゃったわ!一生に飲む量知らないけどー!」

 

レラ「そのままの格好でいいから、手と足を前後に動かして。水を向こうへ押しやるように」

 

鎌田さんはトライしますが、身体が進む感覚がありません。そうして、ジョジョに疲れてきて、浮いているのもママならなくなってきました。

 

鎌田「ダメ。もう無理。わたしはカナヅチなの。子供の頃からカナヅチのオカマってバカにされてきたの」

 

レラ「カナヅチが泳げないイワレはないわ。カナヅチだって泳げるはずよ。常識を疑いなさい。鎌田ミノル!わたしを助ける夢を見なさい!」

 

鎌田さんは一瞬、身体をビクッと震わせ、そのまま硬直してしまいました。

 

レラ「しまった!」

 

そうです。レラの思惑に反して、鎌田さんは見事にカナヅチそのものになり海へ沈んでいったのです。