皆さん、おばんです。



わたし「一万!?」



わたしは声を上ずらせ、「売る売る!」



と彼の気持ちが変わらないうちにと思い慌てて答えました。



レラ「騙されちゃダメよ。そいつはわたしを奪いに来た奴らに、そそのかされてるのよ!」



鎌田はわたしを見て、ほくそ笑みました。



鎌田「やっぱり。あなた、いま、自分の表情変わったの、わかる?」



わたし「へ?いや・・・」



鎌田「金魚の声、聞こえたでしょ?」



わたし「・・・」



鎌田「金魚の声が聞こえると言ったり、急にソレを否定したり・・・コレが本当なら大変な能力だけど。あなたじゃなく、この金魚が、ね。まあいいわ。金魚は別に、どうでも。それより、ほら、カレー食べない?」



鎌田はそう言ってカレーの入ったタッパーの前に座りなおしました。



わたしは、わたしの記憶がレラ・サンに制御されていることを指摘され動揺しており、カレーどころではなかったのですが、鎌田に促されるままカレーの入ったタッパーの前に座りました。



鎌田「さあ、召し上がれ」



わたし「はあ・・・けど、鎌田さん。これ、まだ凍ってるね」



鎌田「そうね。電子レンジでチンチンすればいいじゃない」



わたし「チンが一つ余計だよね」



鎌田「チンチン嫌い?」



わたし「好きではないね。そこで、非常に残念なお知らせがあります。我が家には、電子レンジはおろか、コンロも鍋もございません。つまりこのカレーを解凍し、また、温めることが出来ないのです。そうした文明の利器が無いのです。自然解凍を待って、常温で食べるしかないのです」



鎌田「TVも無ぇラジオも無ぇ♪みたいな、吉イクゾー的価値観の生活をしているのね」



と鎌田は言い、少し思案した後、口を開きました。



鎌田「いいの。いいのよ。Mr. Homerun自然に解凍するのを待ちましょうよ。時間が解決することってあると思うの。そのことを、現在を生きてる人達は忘れてるのよ。それはイケナイことだわ。なんでもかんでも、時間短縮、効率優先じゃ疲れるわ。いや、疲れてるのよ皆。かわいそうだわ。だから、雪が溶けて川になって流れてゆきます♪みたいな感じで、春の訪れを信じて、雪どけを待ちましょうよ。そう。きっと春は来るわ。春の来ない年なんて無かったわ。そんなキモチでカレーの解凍をゆっくりじっくり待ちましょうよ。ほら、こうして」



と言って鎌田はわたしの両手を取ってタッパーに押し付けました。



わたしの手に添えられた両の手のひらは、わたしのソレより大きく、肉厚で、シットリと熱を帯びていました。



わたし「・・・鎌田さんの手って、お父さんの手みたいだね」



鎌田「やーね。Mr. Homerun!わたし、あなたより年下でしょ?」



わたし「そうなの?そういえば、歳いくつ?」



とわたしが聞くのとほぼ同時に、家のドアが乱暴に開かれ、見知らぬ複数の男たちがドタドタ侵入してきたのです。


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