皆さん、おばんです。
この男、わたしを疑っている。おそらく、あのムスリムのスパイから、いろんな情報を得ている。その信憑性の有無を探っている。
鎌田ミノルの戸惑った様子を見て、わたしは何かおかしなことを言ったろうか?と不安になりました。
『金魚の声が聞こえる?』という質問自体、意味不明なのですが、その問いに対する答えが、的外れだったのか。いや、その前の会話に、何かヒントがありそうだ。が、思い出せない。鎌田との、それまでの会話の記憶がスッポリ抜け落ちている。ていうか、こいつ、俺の家に、何しに来たのだろう?
鎌田「レラ、ていうのね、この金魚」
わたし「そう。レラ・サン」
鎌田「その名前、あなたが付けたの?」
わたし「うん・・・いや、だと思う」
鎌田「だと思う?」
わたし「定かじゃないんだ。けど、ずっとレラ・サンて呼んでたからね」
鎌田「そう・・・レラ・サンか」
と鎌田はつぶやき、水槽をカツカツと爪で叩きました。それから、不敵な笑みを作り、媚びるように、こう言いました。
鎌田「この金魚、わたしにくれない?」
わたし「え?レラを?」
鎌田「そうよ。ちょうだい。お願い」
わたし「どうして?」
鎌田「欲しいのよ。ただソレだけよ」
わたし「ただの和金じゃないか。こんなの、その辺でいくらでも売ってるよ」
鎌田「立派な金魚よ。いいじゃない。譲ってよ。いくらなら、譲ってくれる?」
わたし「いくらって、じゃあ、逆に、いくらなら、出せる?」
鎌田「そうねェ・・・コレならどう?」
と言って、鎌田は人差し指を一本立てました。
わたし「千円?」
鎌田は笑って首を振りました。
鎌田「一万で、どう?」
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