皆さん、おばんです。


あれだけ執着していたホームランにアッサリ見切りをつけて、さっさとゴルフに乗り換えるというジョンの変り身の早さに人間不信に陥りかけたわたし。さらに、わたしの天敵、鎌田ミノルの登場で事態は急展開を迎えます。


鎌田はジョンの胸に埋めた顔を耳元まで移動し、熱い吐息を吹きかけながら彼に情報を伝えます。猫未満の脳味噌を持ちながら猫以上の嗅覚と聴覚を併せ持つわたしは、ソレに聞き耳を立てました。そうして盗み聞きした情報とは、このような内容でありました。


7月7日から11日の5日間に渡って開かれる防災国際会議。世界100ヶ国の元首、首相、閣僚級が集まり、自然災害及び人的災害が起こった際、各国が連携しどのような対策と援助が可能かを議論、立案する。そこに、日本からは防災担当大臣と、A首相が参加し、A首相は開会式で演説をする。その後、宿泊先のホテルに向かいV共和国のR大統領と会食する。その際、回転寿司を食べたいという大統領の無茶なリクエストに応えるため、カウンターテーブルを人力で回す、という。ちなみにそのホテルは、鎌田ミノルが警備員として勤めている。


鎌田「結局、ホテルの板前を買収できなかったわ。ごめんなさい」


ジョン「年収の3倍でも、ダメかい?」


鎌田「無理だわ。計画が、気に食わなかったみたい。あいつら、自己保身が絡むと職人気質が出るのよ。普段は給料が安いだのなんだの言い訳してさんざん手を抜くくせに」


ジョン「そうか、良いアイデアだと思ったのだが・・・」


ジョンの言う良いアイデアとは、寿司ネタとシャリの間に超激辛ワサビの粉末入りカプセルをこっそり忍ばせる、という単純なアイデアだったが、しかし、そのワサビカプセルは化学兵器顔負けの特殊な刺激物で、それはもう、辛いの何の、いったんソレを口にしたら一生涯、何を食べても辛いだけ、逆に、何も食べてないときだけ辛さを忘れられる、つまり、安息を得られるというムスリムらしいラマダーン作戦だったのである。しかし、如何なる理由であろうと、味覚を失わせるという、人間の尊厳を奪うような、こんな恐ろしいテロリズムが許されるのだろうか?わたしは、許せない。ダメ、絶対。ちなみに、A首相の好きなネタは、『軍艦巻き』である。


ジョン「鎌田さん、あなたには、ますますホテルに居づらくさせてしまったね。ごめんね。謝るよ」


鎌田「いいのよジョン。謝らないで。これは、わたしが勝手にやっていることなのよ。気にしないで」


ジョン「ありがとう。本当に、心から感謝しています。そして、愛してるよミノル」


その言葉を聴いた鎌田ミノルは内股をさらにグっと絞り込み股間を押さえました。彼は嬉しさのあまり、失禁しそうになったのです。いいえ、したのです。


ジョン「最初の計画通り作戦を実行しよう。若干、内容は変わったが、彼の硬いアタマに正義の一撃を食らわすのは同じさ」


鎌田「OK.ジョン。あなたならできるわ。きっと。愛してる」


と言ってジョンの唇を求める鎌田を優しく制し、ジョンはささやくように言いました。


ジョン「お楽しみは、作戦が終わるまで取っておこう」


そうです。ジョンは、相手の好意を利用しても意に介しない、つまり、自己の目的を果たすためなら手段を選ばない類の人間だったのです。


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