皆さん、おばんです。
ホームランを打たせてあげる、というジョンとの男の約束をすっぽかしたわたし。それでも、良心の呵責、と言えば大げさですが、まったく気にしていなかったわけではなく、気が咎めると言いますか、後ろめたさはあって、けど、お前だってサーカス探してないじゃん、みたいな、そんな意趣返しの気持ちもなくはなかったのですが・・・。
ドンドン!ドンドン!朝っぱらからわたしの閑居のドアをノックするのは一体どこのどいつだい?チャイム鳴らせよ!ピンポン知らんのか?どこの田舎モンだよまったくもう~ムニャムニャと寝くさってたら、それでもドンドンうるさいし帰る様子がないもんで、仕方なく起きて、ドアの覗き穴をのぞくと、なんと!チャイニーズアメリカンのルーシーじゃあーりませんか!あのキレイな歯並びを見せて微笑みドアの前に立っとりますがな!わたしは慌ててロックを外し、ドアを開けました。と、このとき、何の警戒もしていなかったわたしが馬鹿でした。ルーシーの横からヌっと現れたのは、そうです、スナメリ探偵ことジョン・ロトンでした。
ジョン「おはようございます。迎えに来ましたよ」
この野郎、ルーシーをエサにまんまと俺様を出し抜きやがったな!チクショウ!俺の弱点を見透かしてやがる。けど、わたしの住所、何でわかったの?
ジョン「契約書に書いていたでしょう」
そうか、甘かった。契約書なんかに、マジメに個人情報なんて書くもんじゃねえな、正直者が馬鹿をみるよ、って普通は書くけどね。
いやー、それにしても、ルーシーは本当に美しすぎるアジアンビューティーだなーって何かクドイけど、それぐらいの美しさにボンヤリ見とれ、起きぬけの口臭を気にしながら「ルーシーもホームラン打ちたいの?」と質問しました。
ルーシー「わたしはライトを守ります。イチローみたいなレイザービームで走者を補殺します」
ナンだこの女、やけに詳しいな。ジョンの入れ知恵か?しかしジョンは野球のこと無知みたいだし。まあいいや。
わたし「最初に断っておこう。これは弁解ではないよ。わたしが約束した時間の場所に現れなかったのは、君の本気度を知る為だよ。本当にホームランを打ちたいなら、こうしてわたしの家に来るだろうと思ってのことだよ。そうして実際、君はわたしの家に来た。わたしは君の本気を感じたよ」
と、わたしはジョンの目を見ずに言いました。
ジョン「わたしの本気を感じてもらえてうれしいです。さあ、行きましょう」
わたし「おいおい、そう焦りなさんな。ジョン、君はまさか、野球をラジオ体操か何かと勘違いしているのじゃあるまいね。野球をするには道具が必要なんだよ。ボールとバットとミットがね!」
ジョン「もちろん用意してありますよ。車の中に入ってます」
わたし「そう・・・じゃあ、行く?」
そうしてわたしは、カート・コバーンのようなパジャマ姿のまま、ジョン&ルーシーに連行されたとです。
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