皆さん、おばんです。


わたしの「夢」を盗んだかどうかはともかく、メディアを利用した宣伝というのは、破壊的だと思いませんか?

特に、コマーシャルなんかは、人間の行動規範を巧みに操作しているかのよう。

あるメディアが今年の夏のマストアイテムがアロハシャツだと伝え、又、別のあるメディアが金魚柄が流行ると言う。すると、こぞって小売店は金魚柄のアロハシャツを並べる。それらの店を一堂に集めて俯瞰して見れば、まるで金魚すくいの様相。そうして最後にとどめの一撃、ペットに金魚柄のアロハシャツを着せて入店のお客様は全品50%OFFだってさ。というわけで、我々は新たな歴史と認識を育む。犬猫は、金魚柄のアロハシャツを着るものだ、というふうに。


ジョン「ヒデキ?ヒデキとは、あのゴジラ・マツイのことですか?」


わたし「いいえ、違います。ヤングマンのヒデキです」


ジョン「ヤングマンの?そのヒデキは知りませんが・・・盗夢器の話は、冗談です。忘れて下さい。金魚のアロハの話も、偶然でしょう。何年かに一度の、流行のサイクルがまわってきたのでしょう。イギリスでも見られる現象です」


わたし「アロハが流行った記憶、無いけどなー」


ジョン「そうですか?それより、ゴジラ・マツイの名前が出て、あなたにお願いしようとしていたことを思い出しました」


わたし「何だい?何でも言うがいいさ」


ジョン「はい。わたしは、ホームランが打ちたいのです」


わたし「ホームラン?」


ジョン「はい。ホームランです。ホームランを打ちたいのです」


わたし「そう。いいんじゃない。打っちゃいなよ。ドカンと一発」


ジョン「これは冗談じゃありませんよ。本当に、ホームランを打ちたいのです。それこそ、ゴジラ・マツイのように」


わたし「へー、意外だなー。草野球チームでも入ったの?」 


ジョン「いいえ。ただ、ホームランが打ちたいのです」


わたし「あんた、野球したことある?」


ジョン「いいえ、ありません」


わたし「だと思った。イギリス人のムスリムが野球するなんて、モスラがポロシャツ着るようなものさ」


ジョン「モスラ?」


わたし「ジャパニーズジョークさ。まあ、理由はどうあれ、君はマジでホームランを打ちたいのかね?」


ジョン「はい。打ちたいです」


わたし「わかる。わかるよ。その気持ち。日本男子たるもの、一度はホームランを打ってみたいという夢を持つものさ。だけど多くの人間はその夢を叶えられず、夢のままで終わる。このわたしも、子供の頃は野球少年で、ホームランを打ちたいと思って練習に励んでいた。その当時の夢は、甲子園に出てホームランを打つことだったな。PL学園のK・Kコンビに憧れていたのだよ。ところで、K・Kって何だかわかる?」


ジョン「いいえ。わかりません」


わたし「キモイ、コワイという意味だよ。まあいいだろう。わたしが君にホームランを打たしてあげよう。わたしの練習は厳しいぞ!」


ジョン「はい、がんばります」


というわけで、ホームランを打たせるなんて安請け合いしてしまって、翌朝7時にカレー屋の近くの公園に集合という約束をしたものの、野球知らない奴がホームラン打ちたいなんてきっと軽いノリで言っちゃったんだよな、と都合よく考えて、それを口実にして、面倒くさくなってすっぽかしたのです。

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