皆さん、おばんです。


さて、閉館した水族館でパンパンしてたら「パンパンうるさいね!」と誰か?に怒られたわたし。

 その声がする方に目を凝らすと、暗がりに、大きなウンコみたいな物体がぼんやり見えたとです。それを確かめるべく、観客席からプールのあるステージの前まで下りて行くと、ウンコに見えたモノの輪郭がくっきりはっきりして、ステージにモリっと横たわるモノが、ウンコじゃなくてアシカだとわかったとです。そうです。ここはアシカショーが行われるプールだったのです。


アシカ「ちょっとアンタ、ソコで何してんのよ」

わたし「いやー、人を探してまして」

アシカ「見ての通り、誰も居やしないわよ」

わたし「そうみたいですね。お邪魔しましたー」


 そう言って立ち去ろうとすると、突然、アシカがステージをツっーと滑り下りて来て、わたしの前にピタリと止まったとです。そして、驚いて逃げることも出来ないわたしの股間に鼻をピッタリつけたとです。それから、わたしの顔を下から覗き込んでヴォアッヴォアッと謎の鳴き声を発したとです。


アシカ「アンタ、アンタもしかして・・・」

わたし「え?もしかして?」


アシカ「そう、忘れもしない、アタシが初めてこのステージに立った日、一糸まとわぬ姿を人前にさらすことの羞恥と緊張で頭はシロクマ、身体はツリガネ、コレ一体なーんだ?みたいな状態でアレだけ練習したダンスのフリがぶっ飛んで飼育員に睨まれて立ちすくむだけのアタシを見かねて『ルーシーがんばれー!』て応援してくれた男の子じゃないの?


わたし「ああ、はいはい。わたしのこと覚えていてくれたとですね」

アシカ「ん?アンタ・・・若づくりしてるけど、かなりのオッサンじゃん。アタシがデ 

     ビューしたとき、すでにオッサンじゃん。何でウソつくのよ!」

わたし「いやー、話し合わせた方がいいかと」

アシカ「いいのよ合わせなくて!ウソつかないで!もう帰るわよ!帰るとこない 

     けど!」

わたし「すみません。もうウソつきません。ところで、あなたルーシーって名前な

     んですか?」

アシカ「そうみたいね。皆、ルーシーって呼ぶからルーシーなんじゃない」

わたし「奇遇だなー。いやね、わたしの馴染みのカレー屋にもルーシーっていう

     女の子がいるとですよ」

アシカ「その娘とアタシ、どっちがキレイ?」

わたし「え?」

アシカ「その娘とアタシ、どっちがキレイかって聞いてんのよ!早く答えて!」

わたし「アシカと人間じゃ、比べようがナカトですばい」

アシカ「どうして?同じホニュールイじゃない」

わたし「ホニュールイでも、種類が違うとです。~科とか~属とかアルでしょ?」

アシカ「もういい!バカにして!アシカをバカにして!アタシがあと3年若けりゃ 

    その女はこう言ったハズよ!『あなたみたいなキレイなアシカと同じ名前 

    なんて、私、こっ恥ずかしいわ』ってね!」

わたし「・・・はい」

アシカ「ごめんなさい。声を荒げたりして。普段はもっとオシトヤカなのよ。アシカ 

    だけにね」

わたし「・・・はい?」

アシカ「気が立って、なんか、イライラしてたの」

わたし「どうして?」


アシカ「アタシだけ、置いてきぼりくらったのよ。皆、ココを出て、新しい職場へ行ったの。アタシ、最近、また腰を悪くしてね、持病なのよ。ダンスのシメに決まってやるポーズがあるのね。鼻面にペンギンを乗せて、尻尾を上げるエビゾリのポーズ。それのやりすぎ。勤続疲労よ。それで、そこまでの移動に耐えられないだろうとかなんとか言われて、もう年寄り扱いよ。もしかしたら、このまま放ったらかしにされるかもしれない。それか、裏松島の特別養護老動物ホームに入れられるか、どちらかよ」


わたし「さすがに、放ったらかしは無いでしょう。これまで、アシカショーの看板ス 

    ターとして水族館に貢献してきたのに」


アシカ「甘いわね。あまちゃんよ。じぇじぇじぇよ。久し振りに言ったけど、アタシは若い頃から生意気だったし、ワガママだった。アジなんか食べたくないから、わざと食べないでいたらステージを降ろされたこともあったわ。アタシはイカとかエビとか歯ごたえがあるものが好きなのに!そうして、歳とってきて、好き嫌いがはげしくて、ダンスのキレも無くなってきた年寄りはリストラの対象よ。オハライ箱よ。ラ・フランスよ。いえ、ヨウナシよ」


わたし「・・・はい。まあだけど、そんなもんすかねー。アシカの世界も世知辛い 

    なー。ところで、また話が変わりますが、ここには金魚は居ないのです 

    か?」

アシカ「金魚?」

わたし「そうです。金魚。サーカスという名前なんですけど、その金魚を探してい

    るのです」


アシカ「ふーん・・・あっ!そう言えば、1~2年前に、ステージで踊っていたとき、飼育員がアジと間違えて金魚を。そのときはわからなかったけど、一旦それを飲み込んで、いつもと違った感じがしたの。なんか泥臭くて、気持ち悪いから人間ポンプみたいにそのまま吐き出したことがあったわ。それがここのプールに落ちて、それから、どっかに泳いで行ってしまったの」


わたし「マジすか?」

アシカ「マジよ」

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