
本文はここから
2週間後に家族ぐるみの食事会を企画した茜と紗江子は 誰もいない昼間に
こっそりと茜の元の家覗きに行った。
目は好奇心で輝き 心は茜の守護神として燃えている紗江子を頼もしく思いながら
茜は自宅のロックナンバーを押した。
暗証番号を押すタイプのロックだ。 夫が変えてなければ開くはずだった。
カチリン と良い音がして玄関のロックが外れた。
門扉から玄関まで並んでいた植木鉢は 全て片付けられひとつもなかった。
暗証番号は知っているのに 見知らぬ家に入るような罪悪感を抱きながら
茜はかつて自分の城だったはずの家に そろりと入っていった。
目的は自分の実印と貯金通帳を持ち出すことで そのことは夫にメールで伝えておいた。
無断進入ではないのだと言い聞かせながら 茜が靴を脱ぐと玄関の横にある階段には
人影があった。
『きゃーーーーー』
茜の絶叫に呼応して紗江子も絶叫した。 2人の声が閉めたばかりの玄関を震わせた。
気付くと2人は抱き合って その場にへたり込んでいた。
『誰?』
そこには かつて茜の夫であった裕也が立っていた。
紗江子が自己紹介を終えると 裕也は不機嫌そうに溜息を付いてから
『席を外してもらえませんか?タクシー呼びますから。』
と2度繰り返したが、茜がそれを断った。 それなら私も帰るし用事を済ませたいだけだから。
そう言い続ける茜に さらに深い溜息を付いて裕也は頭を振った。
『話をしてから帰りなさい。 あれから一度も話をしてない。』
常識的に言ったらここに私がいるのはきっと 不自然だし理不尽だろうな。
直人さんにもきっと おかしいと言われそうだわ と頭で考えた紗江子だったが
とても茜を置いていく気にはなれなかった。
それほどに この夫は茜に未練と怒りをむき出しにしているではないか。
想像していた以上に未練が強そうで 紗江子は少し恐怖も感じた。
ランキング参加してます
ランキング アップするのが 夢です 笑
現実は さがりまくってます 笑
こちらの続き物です。