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『優 これから金曜日 慎吾君とこで世話になるか?』
『・・・・なんで?』
直人は 黙りこんだ。 なんでだろうか と直人も思ったからだった。
ついこの前の週末飲みに行って 紗江子の優しさや可愛らしさに触れた。
素直でまっすぐな彼女の心に触れてみて 日常を滞りなく回し続けることに
くたびれていたんだな と改めて思い知ったのだ。
なにかの拍子に ふと見つけてしまったぶつけた記憶のない痣のような痛み。
その痛みに ふとシップを貼ってもらった週末の時間を 優にも味合わせたいのだけど
なにを どう説明したらいいのか さっぱりわからないのだった。
『優が行きたくないならいいんだよ。 もし 行ってもいいなって思うなら お願いするし
優が嫌なら 今まで通りにするさ。』
『・・・とーちゃんは 帰って来ないってこと?』
はっとした。 説明が足りなすぎるのが 自分の最大に欠点だと知っているつもりなのに
つい 何かを隠そうとして 大事なことを省いてしまう。
今だって 優を傷つけたり 余計な心配をさせたくないから簡単に 気軽に話を進めようとして
かえって優の不安と疑問を膨らませてしまったのだ。
家族にこそ 何もかも噛み砕いて話をしなければいけなかったのに。。。
父親として 直人は優に謝った。
そして 紗江子の提案を詳しく説明した。 シッターと自宅で待っているより 慎吾母子の家で
食事したり 宿題しながら待ってる方が 楽しいんではないか。
あちらも 母子2人だし うちが父子2人である寂しさを解ってくれて 誘ってくれたんだ。
その説明の一番奥の引出にしまってある 紗江子への生まれたての想いは
伏せようとしたのだけれど まっすぐな優の瞳を覗き込んでいるうちに 言葉が進んだ。
『とうちゃんとしては 慎吾君のお母さんともっと仲良くなりたいとも思ってるんだ。』
『・・・そか。 いいぢゃん。 俺 慎吾んちのおばちゃん好きだよ。』
『そか。うん。』
『さりこんっていうんだろ? とーちゃんが今度結婚することって。』
『さ・い・こ・ん だな。さりこんじゃなくってな。』
『そか。それ すんの?』
『まだまだ そんな話にはなってない。もし誰かとそういう話をしたくなったら
まず一番最初に優にする。優がいいねって思わないことは何にもしないって。
前に話したろ。引越しも再婚も習い事も何もかも 優と父ちゃんでちゃんと決めるって。
離婚したときは まだ優が小さすぎて決められなかったけど これからのことは全部一緒だ。』
息子の9年という 短くて濃厚な時間に凝縮されているであろう 我慢のスイッチ。
敏感に反応してしまうそのスイッチが いつしか醒めた人間が持つ冷たさになってしまわないよう
直人はずっと気を配っているつもりだった。
我慢をさせないようには 暮らせない。
親との時間も したいことへの情熱も 家族の協力も 細やかな心配りも 目配りも
きっと 自分がわかっているよりずっとたくさん 息子は我慢してるのだろうと思う。
『それなら 俺 毎週金曜日 慎吾と遊んでいいの? 泊まってもいいの?』
『どうかなー? それは 慎吾のお母さんに聞いてみないとな。』
ほっとした。
自分が進めたい方向に話が進んだからではなかった。
優の心が求めている方向が まだ子供っぽいことへの安心感だった。
携帯を取り出し 直人は紗江子にメールを打った。

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スタートしました。
初めて 丁寧に書き上げるってのを目指してます。
話は今までと違って 展開遅い予定です。
夏中 これ書いてるかも 笑
お付き合い お願いしますね(#⌒∇⌒#)ゞ
この物語は こちらの続きとなっております
興味がある方 どうぞ