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翌週の土曜日 会社が契約している いくつかの不動産屋からの資料を持って
浩輔と千奈美とマリアは 賃貸物件を見に N市へと向かった。
『見知らぬ土地で一番大事なのは 医療。』
と千奈美が何度も言ったので 浩輔も高速を降りると カーナビを見ながら
病院のある場所を中心に 車を走らせた。
時々 遠くを見つめている助手席の千奈美の表情に 浩輔は色気を感じたが
黙って運転を続けた。 言えば きっと睨み付けられる・・・
それにしても 綺麗だ。
今でも考える。どうしてこんな綺麗な女性が 自分と結婚したのだろう・・・と。
結婚式で 同僚や親戚が 冷かし程度に『綺麗』といえないほどに 千奈美は美しかった。
羨んでいる連中の顔を眺めるたび 『俺もそう思う』 と踊りだしたいほどだった。
『思ってるより 都会だねーー。店も多いし 暮らしやすそうじゃないか?』
千奈美は そうかもね と呟くと マリアに
『お腹空かない? 喉は?』 といつもの母親の顔で 後部座席に振り向いた。
『お腹 すいたーーー』
マリアは 3時間ほどのドライブにも 飽きているらしく チャイルドシートのベルトを
外そうとし始めた。
『だめだよ。外しちゃ。 パパ ちょっとどこか停まって。』
赤信号の手前に 全国チェーンの牛丼屋の看板が目に入った。
『安く済むから ここにしよう。』
よりによって 牛丼・・・ とがっくりするが ここが浩輔なんだわ と千奈美は
自分の気持ちから 笠原との想い出の亡霊を 追い出そうと決意した。
N市で暮らせば 否応なしに心と身体のどこかが 反応してしまうのではないか という想いが
この数日 千奈美を不安にさせていた。
千奈美が浩輔に求めている 穏やかで堅実な人生や
浩輔が千奈美に求めているであろう 明るくて平凡な日常。。。
娘のマリアが 両親に求めているはずの 遠慮のない無償の愛情。
千奈美が思い描く 平凡で普通の家庭。 無邪気な家族。
浩輔は 封印した千奈美の暗い人生を 何もわかってないけれど
前向きで 溢れ出る愛情深い千奈美を 誰より知っていて 大事にしてくれている。
家族で牛丼を頬張りながら 私たちの足元には きっと 未来があるんだ。
千奈美は 安すぎるスジ肉を引っ張りながら 声を立てて笑った。
書いては消し 書いては消し しているうちに
『保存したはずの記事が消えた』 。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。
お願い。。。 そういう 残念すぎることは しないで サーバーちゃん。。。