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とにもかくにも、任された仕事はこなさねば。
編集業界に骨を埋めるまでの覚悟はないけれど、
今の私にとっては確実なステップアップには違いない。
インターフォンで社名を名乗ると、無言のまま開かれた電子錠。
「お、お邪魔します・・・」
返事は相変わらずない。
仕方なく自分でスリッパを取り出し、廊下を進んだ。
開きっぱなしのドアをくぐると、だだっぴろいリビング。
その中央に、脚を開き、両手を高々と天に突き上げている人・・・
ヨガ?ヨガのポーズか??
「あのぉ・・・」
声をかけると、ゆっくりポーズを解き、こちらに向き直った。
「あなたが新任さん?」
少し長めの髪を無造作に縛って、その切れ長の目と、薄い唇が微かに笑ってる。
「は、はい!あの・・・」
「はじめまして。月島です。」
月島アレン。
お話の内容はラブコメだし、読者もほぼ女性だし。
てっきり女流作家だと思い込んでいた。
しかし、今私に握手を求めている目の前の人は、どうみても男の人。
「は、初めまして。藤川です。よろしくお願いします。」
「田中ちゃん、具合どうなのかしら?」
「・・・あ、あの、今検査入院中で、近々手術になると・・・」
「あら・・・そう。ま、お大事にって伝えてちょうだい。」
「はい・・・」
鼻歌まじりにキッチンへ向かう彼・・・を、目で追う。
彼・・・だよね?
声も、見てくれも男。
だけど、話し言葉や仕草は、完全に女・・・
「どうやら・・・何も聞いてなかったみたいね、あたしのこと。」
ペットボトルの水を一口飲んで、彼・・・彼女・・・月島先生はそう言った。

