■紅花の話
 2024/5/26~30は、二十四節気、小満の次候「紅花栄う」です。
 最近、七十二候の話題に頼ることが多すぎるな~と思いながらも、他によい
 アイデアが浮かばなかったので、七十二候の言葉に頼ってしまうかわうそで
 した。
 さてさて、本題。

  紅花栄う (べにばな さかう)

 ここで登場する「紅花(ベニバナ)」は紅の染料となることや、最近ではそ
 の種子から食用油(紅花油)が得られることでも知られ花の名前です。
 紅花という名前から

  赤い(紅色の)花?

 と思う方もいるようですが、花の色は黄色がかったオレンジ色。紅色の花で
 はありません。原産地は東アフリカだとも、北部アジアとも言われますが、
 原種は定かでは有りません。

※Web こよみのページ「誕生花のページ」の6/10,6/29に紅花の写真がありま
 すので、どんな花か確認したい方は御覧ください。
 https://koyomi8.com/cgi/today/bflower.php?date=20240610

 この花から、見事な紅色の染料が得られることは古くから知られており、日
 本には古墳時代には既に紅花が持ち込まれていたと考えられています。
 黄色い花なのに得られるのは紅色の染料というのが不思議なところですが、
 一定の手順で処理することで紅色の染料が得られます。

 ちなみに、この一定の手順てどんなものかと思ってインターネットで調べて
 みたら、山形県河北町役場のHPで「誰にでも出来る紅花染」という記事を見
 つけました。この記事によると
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   1. 花びらを摘む。(花の色が黄色から山吹色に変わり、朱色がさした頃)
   2. 水洗いする。
   3. 軽く絞ってビニールの袋に入れて密封する。
   4. 一昼夜のちに取り出し、すり鉢でつぶす。

    ・・・息切れしたので 5~11を省略・・・

  12. また新しい炭酸カリ8%溶液に11番の工程を繰り返す。
  13. 12番の工程をもう一度繰り返し、都合3回分の液を作る。
  14.  3回作った液を一緒にする。
     これが、紅染めをする紅汁の染料である。

    ・・・息が続かないので 15~21も省略・・・

  22. 布を取り出して水洗いをし、陰干しする。

 ※河北町役場HP 「誰にでもできる紅花染」より抜粋
  https://x.gd/1SqAc
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 という手順で誰にでも布の紅花染が出来ます。簡単簡単・・・
 うーむ、「誰にでもできる」といわれてもな。頑張れば出来るらしいと云う
 ことは判りました(私は無理ですけど?)。

 私が省略した5~11,15~21もきちんと読んで実行すれば紅花を用いて布を染
 めることが出来るようですので、興味があって私よりずっと根気のある方は
 紅花染にチャレンジしてください(他人任せのかわうそでした)。

 それにしても手間がかかっていますね。よくこんな手順を踏むと見事な紅色
 が得られると解ったものだと感心します。
 こういうことを調べてみると現代人は昔の人より進歩しているとか、知識が
 豊富だとか、恥ずかしくて言えないなと思うかわうそでした。
 おっと、脱線しすぎだ。

  閑話休題

◇紅花の名前色々
 紅花は有用な植物として盛んに栽培されるようになり、江戸時代には藍・麻
 と並んで「三草」と呼ばれるほどになりました。
 これだけ拡がった花ですから紅花以外にも色々な異称が生まれました。その
 異称を拾い出してみると

  紅藍花(ベニバナ)、紅粉花(ベニバナ)、紅(クレナイ)、
  呉藍(クレノアイ)、紅藍(コウラン)、紅花(コウカ)、
  韓紅(カラクレナイ)、末摘花(スエツムバナ)

  英名:サフラワー (safflower)

 と言った具合。ちなみに、「呉藍(クレノアイ)」は呉国から伝えられた染
 料を得る花という意味でしょうか。
 この「クレノアイ」が転じて紅(クレナイ)になったと言われます。

 異称のほとんどは紅花から得られる色と関係するのですが、その中で色とは
 関係の無い異色(?)なものが一つ混じっています。
 「末摘花」がそれです。

 この色と関係無い「異色」の名前は、先端の花から摘んでゆくことから生ま
 れたようです。紅花は、その先端(先っぽ)から花が咲き始め、徐々に根元
 の方の花へと移って行くそうです。染料を得る目的では、咲き始めたばかり
 の花がよいので、花は先端から摘むことになります。

 根元が「元(モト)」なら、先端は「末(スエ)」。
 この末から花を摘んで行くので「末摘花」なのだそうです。
 こんな風に名前の語源を辿ってみると、染料を取る目的からついた名前なの
 で、色とは関係無さそうにみえて、やはり「色」と関係のある名前でした。

◇「紅花栄う」と紅花の季節
 本日は紅花の話ですけれど、「暦のこぼれ話」で採り上げているので、ちょ
 っとくらいは暦や季節と関係の話をしておかないと格好がつきませんね。
 そんなわけで最後の最後にちょっとだけ、暦と関係した話。

 現在、「紅花の産地」と言われて真っ先に浮かぶのは山形県。
 山形県は県の花が「紅花」となっているくらいです。
 この話でも既に登場して頂いた河北町も山形県に所在する町です。

 さて、この紅花の本場とも言える山形ですが、山形での紅花の花の時期はい
 つ頃かというと、6月末から7月頃。ちょっと、暦の上の「紅花栄う」と時期
 が違っている感じです。それで、七十二候の「紅花栄う」の紅花は、紅花で
 はなくて「紅色の花」ではないかと考える人もいるようです。例えば、山躑
 躅(ヤマツツジ)のような紅色の花ですね。

 この辺の謎はどうやら、紅花の種蒔き時期の違いによるもののようです。
 雪の多い山形県での紅花の種蒔き時期は3~4月頃。春撒きが主なようで、こ
 の時期に撒いた紅花の花期が6月末~7月頃となります。

 ですが、紅花という植物は結構寒さにも強いので関東以西(と言うか関東以
 南)では10~11月の秋撒きもよく行われるようで、秋撒きだと花の時期はち
 ょうど七十二候の「紅花栄う」時期。

 七十二候に「紅花栄う」が取り入れられたのは、日本で最初に作られた独自
 の暦、貞享暦(あの、渋川春海の作った暦)からです。
 江戸時代には三草と呼ばれたほど栽培が盛んだった紅花は、季節の節目を表
 す誰もがよく知る花だったと言えますね。

 以上、辛うじてですが「暦のこぼれ話」の面目を保った本日の「紅花の話」
 でした。

 

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2024/05/26 号