花  調  べ

 

サンショウ(山椒)

別名 ハジカミ

 

サンショウ(山椒[5]学名Zanthoxylum piperitum)は、ミカン科サンショウ属落葉低木である。別名はハジカミ。山地の雑木林などに自生し、和食料理に添えられる若葉は食材として木の芽とも呼ばれる。雄株と雌株が別々であり、春に葉のわきに黄緑色の花を咲かせ、雌株のみ実をつける。葉と雄花、球果に独特な香りを有し、香辛料として使われる。

 

名称

和名サンショウの由来は、「椒」の字には芳しい・辛味の意があり、山の薫り高い辛味の実であるため「山椒」の名が付けられたと考えられる[6][7][8]。また、漢字の「椒」には小さな実という意味があり、山にある小さな実の意味で「山椒」となったとする説もある[9]

学名の Zanthoxylum は「黄色い木」の意味であり、これは材が黄色いために命名された。また、piperitum はコショウのようなという意で、実が辛味を有するために命名された[10]

日本語での別名や地方名に、ヤマザンショウ[11][12]、ハジカミ(古名)[13][12]、キノメ[11][12]、アツカワザンショウ[1]、イタハジカミ[11]、イボザンショウ[1]、サンシュ[14][11]、サンシュノキ[14]などがある。ハジカミ(椒)は、ショウガなどの他の香辛料の別名でもあり、その区別のためにサンショウは、古名で「ふさはじかみ」(房椒)、「なるはじかみ」(なりはじかみ、成椒)と呼ばれた。なお「はじ」は実が弾けることに由来し、「かみ」はニラ(韮)の古名「かみら」を指す言葉でサンショウの辛味を表現している[6]。「ふさ」は実が房状につくことを意味し、「なる」は実ができるハジカミであることを示す[15]

英名は、Japanese pepper(ジャパニーズ・ペッパー)[注釈 1][8]、Japanese prickly ash(ジャパニーズ・プリクリィ・アシュ)[10]。中国植物名(漢名)は、山椒(さんしょう)である[14]

 

分布・生育地

原産地は東アジア日本列島朝鮮半島といわれ、北海道から本州四国九州屋久島までの日本列島と、朝鮮半島の南部、中国にも分布する[16][17][18][注釈 2]。各地の丘陵や山地に分布し[19][5]、落葉樹林や藪の半日陰地に自生する[6][11]。また、雑木林のようなヒトの手の入った場所でも見られる[6]。ミカン科の植物としては比較的耐寒性が強く、冷帯である北海道にすら自生するものの、石狩平野の低地帯を境に北や東は分布が大きく減少する[20]。乾燥や夏季の日差しに弱く、半日陰の湿潤な地勢を好む。栽培も行われていて、庭にも植えられている[19][12]

 

形態・生態

落葉広葉樹の低木で[13]、樹高はおおよそ1 - 3メートル (m) ほどに育ち[6][18]、ときに5 m程度に育つ場合もある[11][5]樹皮は灰褐色で皮目が多く、棘や、その棘が落ちた名残のいぼ状の突起がある[13][5]。若いには皮目があり、無毛かときに毛が残り[5]葉柄の基部に鋭いが2本ずつ対生してつくが、ときに単生するものや[5]突然変異で棘の無い株(実生苗)も稀に発生し得る[19]。棘の無い「実山椒(雌木)」としては但馬国の朝倉谷(兵庫県養父市八鹿町朝倉地区)原産の「朝倉山椒」が特に有名であるものの、日本各地で棘の無いサンショウの栽培が見られる[16]

 

互生し、奇数羽状複葉[19]で、長さは10 - 15センチメートル (cm) 程度である。5 - 9対の小葉は1 - 2 cmの楕円形から卵状長楕円形で[13]葉縁には鈍鋸歯があり、鋸歯の凹みに油点がある[19]。葉の裏は表に比べて白っぽい。葉の「油点」とは、細胞の間に油が溜まった場所で、葉を揉んで潰すと強い芳香を放つ[19]。油点は、太陽に透かして見ると透明に見えるので明点とも呼ぶ。葉の色は、芽生えたばかりの春の若葉は黄緑色、夏ごろには濃緑色に変わり、秋には紅葉して鮮やかな黄色に変化する[9]

花期は晩春(4月 - 5月ごろ)で[5]雌雄異株[12]。枝先の葉腋に小さな黄緑色の花が多数開花し[19]、直径は5ミリメートル (mm) 程度である。雌花には2本の角のような雌しべが突き出す。

 

果期は初秋から秋(9 - 10月)[18]。雌株は球果が結実し、その果皮は芳香を有する[6]果実は1個から3個の分果に分かれて[19]、直径は5 mm程度。初め緑色であるが、秋に赤褐色に熟し、裂開して中から黒い光沢が持った球形の種子が出てくる[19][9]。種子を落とした果実は、赤かった果皮が茶色に変化し、そのまま枝に残るが[5]、紅葉するころにはもうほとんど残っていない[9]

 

冬芽は枝に互生し、芽鱗がない裸芽で、幼い葉が小さくまとまっている[5]。棘と冬芽のわきにある葉痕は半円形や心形で白く目立ち、維管束痕が3個つく[5]

 

なお、実山椒の日本での収穫量は、和歌山県が約8割を占めている[21]。和歌山県の有田川町(旧清水町)、紀美野町の特産品として栽培されている「ぶどう山椒」は果実・果穂が大型で葡萄の房のような形で多数できるため、このように呼ばれている[22]

山野の自生個体

雄花

果実と種子

葉と棘

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