花  調  べ

 

アンズ(杏子・杏)

英名 アプリコット

別名、カラモモ(唐桃)

 

アンズ(杏子・杏[7]学名Prunus armeniaca)は、バラ科サクラ属落葉小高木である。アプリコットと英名で呼ばれることもある。別名、カラモモ(唐桃)。中国北部で形成された東洋系の品種群には、ウメとの交雑の痕跡がある。原産地は諸説あるものの、中国の山東省河北省の山岳地帯から中国東北地方の南部とする説が有力とされる[8]。学名のPrunus armeniaca は、ヨーロッパにおいては近世にいたるまでアルメニア (Armenia) が原産地と考えられていたためつけられたもの(『産地』節も参照)[8]

 

名称

和名アンズは、杏子の唐音とされている[9]。古名は、カラモモである[8][10][11][12][13][14]。中国植物名は杏(きょう)[15]

 

中国大陸から日本への渡来は古く、日本最古の本草書『本草和名』(918年)には、漢字を「杏子」、和名「カラモモ」とある[16]。標準和名アンズの読みは、江戸時代になってから、漢名の杏子を唐音読みでアンズとなったといわれている[16]

 

特徴

中国の北東部[17]、山東省、河北省、山西省黄河より北の原産といわれる[16]。日本では、長野県山梨県山形県を中心に栽培されている[15][16]

 

落葉広葉樹小高木[15]。開花期は春(3 - 4月頃)[17]。桜よりもやや早く、に先立って淡紅色のを咲かせる[17]。花は一重咲きのほか、八重咲きの品種もある[17]は卵円形で葉縁には鋸歯がある[17]

 

花は美しいため花見の対象となることもある。自家受粉では品質の良い結実をしないために、他品種の混植が必要であり、時には人工授粉も行われることがある。6 - 7月には収穫期を迎え、ウメによく似た果実は橙黄色に熟し、果肉は赤みを帯びて核と離れやすくなる[16]。果実の表面には、細かな産毛が密生する[17]

 

アーモンドやウメ、スモモと近く、容易に交雑する。ただし、ウメの果実は完熟しても果肉に甘みを生じず、種と果肉が離れないのに対し、アンズは熟すと甘みが生じ、種と果肉が離れる(離核性)。またアーモンドの果肉は、薄いため食用にしない。耐寒性があり比較的涼しい地域で栽培されている。

 

果実

種子

若い実

果実

 

大きさの比較

プラムポックスウイルスに感染したアンズ

 

産地

中国の原産であるが、日本へは渡来種とされ[17]、弥生時代以降の遺跡から出土している[21]。果樹として栽培の歴史は古く[17]、愛媛、広島など瀬戸内地方、青森県津軽地方が古い産地である。広島大実などの品種がある[22]

 

長野県ではアンズの栽培が盛んだが、そのきっかけは300年以上も昔に遡る。伊予宇和島藩のお姫様がこの地に輿入れする際、故郷の花を忘れないためアンズを持ち込み、場内に植えたのが始まりとされている[23]

 

ヨーロッパへはイタリア半島インドペルシアを通じて伝わった[13]古代ローマへは紀元前にすでに伝わっていたとも[13]、1世紀ごろにギリシャまたはアルメニア経由で伝わったともされる[8]。イギリスへは14世紀の中頃か16世紀の初めに伝わり[8]、フランスでは17世紀にようやく南部で栽培が始まった[13]。アメリカ大陸へはスペイン経由で18世紀に伝わった[8]

定植後、7年

 

利用

果実は生食のほか、ジャムや乾果物、果実酒などにして利用される[17]。薄い桃色の花は花材にもされる[17]。果実の果肉は、カロテンビタミンA)・B2Cのほか、クエン酸リンゴ酸などの有機酸スクロースなどの糖分5 - 10%を含む[16][7]。未成熟な種子や果実には、青酸配糖体の一種アミグダリンが含まれる。

 

種子(仁)は、アミグダリンを約3%、脂肪油を約35%、ステロイドなどを含んでおり[16]杏仁(きょうにん)と呼ばれる咳止め(鎮咳)や去痰、風邪の予防の生薬(日本薬局方に収録)として用いられている[17]。また種子は、杏仁豆腐の独特の味を出すために使用される[15]

 

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