花  調  べ

 

ヤマノイモ(山の芋・山芋)

 

 

ヤマノイモ(山の芋[2]・山芋[3]学名Dioscorea japonica)は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草。または、この植物のとして発達した担根体のこと。地下に生じる芋は、ジネンジョウ自然生)、ジネンジョ自然薯)、ヤマイモ山芋)ともよばれ、食用になり、とろろは粘性が非常に高い。また、ヤマノイモ属の食用種の総称ヤム(yam)をヤマノイモ、ヤマイモと訳すことがある。

 

名称

古くは中国原産のナガイモを意味する漢語の薯蕷を当ててヤマノイモと訓じた。日本特産で、英名はジャパニーズ・ヤム(Japanese yam[4]中国植物名(漢名)では、日本薯蕷(にほんしょよ)という[5]。日本原産の種であり、学名はディオスコレア・ジャポニカ(Dioscorea japonica)である。

別名のジネンジョ(自然薯)は、自然に生えている芋であるところからついた呼び名である[5]。日本で「芋」といえば、ヤマノイモのことを指す言葉であったが、人里で栽培される南アジア原産のサトイモが普及するにつれて、これに対してヤマイモ(山芋)とよばれるようになったものである[2]。地方により、キリイモ(霧いも)、トロロイモ、ムカゴイモなどの別名でもよばれる[6]

畑で作られる中国原産のナガイモ(学名: Dioscorea polystachya)と一緒にして「やまいも」とよばれることもあるが、ナガイモとヤマノイモはぞれぞれ別々の植物であり、本来「山芋」といえば日本原産のヤマノイモのほうを指した[2]。ナガイモの一品種にはヤマトイモ(大和芋)があり、日本の大和地方から栽培が広がったと考えられているが、ヤマイモ(ヤマノイモ)とヤマトイモの音が似ているので混同が生じたとも考えられている[2]

 

分布と成育環境

日本原産で、北海道南西部[7]から本州四国九州沖縄に分布[8]、国外では台湾および、朝鮮半島中国に分布する[9]。平地から山地までの山野の林縁やなどに他の木に絡みついて自生し[10][9][3]里山の林道沿いや河川沿いの土手によく生えている。やや湿った土壌を好むが、鬱蒼とした林の中では自生しにくく少ない。高山には分布しない。発育条件が合えば公園の植え込みでも生育する。

 

形態・生態

雌雄異株多年生つる植物で、茎は淡緑色で他物に絡みつき、地上部は1年で枯れる[11][10]。茎は長く伸びて、まばらに枝分かれをする[11]はふつう対生するが、まれに互生し、葉身は長卵形から三角状披針形で、基部が凹んだ細長いハート形をしており、長い葉柄で茎につく[11][10][8]葉身には先端に向って伸びる5本の葉脈が目立つ[2]

 

花期は(7 - 9月ごろ)で[6]葉腋から3 - 5本の細長い穂状の花序を出して、白い小さな粒のような目立たない花を付ける[11][2][9]雌雄異株で雄株と雌株があり、雄花の花序は直立し、雌花の花序は垂れ下がる[11][10]

 

果実蒴果で平たく、円形の大きな3枚の陵(翼)があり、縦の長さより横幅が広い[11][10]。それぞれの陵が中に種子を1個含んでいて、熟すと壁が剥がれて、中から扁平な種子が出る[10][8]。種子は、周囲に紙のように薄い円形の膜質翼がついていて、果実が割れたときに散布される[11][10]。雌株では種子のほかに、葉腋に発生する球状の芽である零余子(むかご、珠芽)をつけて栄養繁殖する[10][8]。ムカゴ(球芽)は、種類によって付けるものと、つけないものがある[12]。ムカゴは直径1センチメートルほどの球状から、大きなもので長さ3センチメートルほどに達する場合がある。

 

地下には円柱状で多肉質の担根体(芋)が1本あり、自然薯(じねんじょ)ともよばれている[10]トロロイモとしても知られているが、芋とされる中が白くて柔らかい部分は、植物学的には特殊な組織で担根体(たんこんたい)とよび、ヤマノイモ属に特有な根でも茎でもない器官であり[2]、茎の基部についた枝の下側部分が伸びたものである[11]。担根体は地下深くへとまっすぐに伸びて[11]、石などの障害物がなければ長さは1メートルを超えることもある[13]。毎年春に再び頂部から発芽して地上部を育てる栄養源となり、成長にしたがって担根体は縮小して夏までには元のイモはすっかりなくなって空の袋となり、秋までには再び栄養を蓄えて一回り大きな新しい担根体と置き換えられ更新される[6][3]。なお、秋にできるヤマノイモにできる芋のようなムカゴも、小型の担根体である[2]

 

ムカゴ

果実

販売されている自然薯

 

       ヤマイモ畑

 

採種・栽培

元来は野生の植物であり、晩秋にできる根茎を食用とするため、かつては山へ行って掘ってくるものだった。ヤマノイモと外観がよく似ている種にオニドコロがあり、収穫の際に間違うことがある[5]。オニドコロは葉が互生し、苦くて食べられない[5]

 

イモ(担根体)は晩秋になって地上部が枯れるころ(11 - 1月[6])が収穫時期である。枯れ残った蔓を目当てにして山芋を探すが、地上部が枯れると場所がわからなくなるので、枯れる前に目印をつけておく[13]。芋を掘るには深い穴を掘らねばならないので、なるべく斜面の所を探す。

掘る道具は、柄の長い[6]、シャベルや移植ゴテのほか[13]掘り棒芋掘り鍬と呼ばれる大人の背丈ほどので、先端が平らになったようなものを使う。蔓が地面に入り込んだところを特定し、イモを折らないように周辺の土を深く掘り下げて、石などを取り除きながら注意深く掘り出す[6]。地中深く曲がりくねって伸びるイモは、折らずに掘り出すまで難しさがあり[6]、先端まで掘り出すにはかなりの根気がいる[13]。うまく掘り出せた場合、蔓の元端に当たる芋の端を残して、穴を埋めるときに一緒に埋めておけば翌年も芋が生育し、再び収穫することができる。

 

むかごの採取時期は秋(9 - 11月ごろ)で、熟すと触れただけでつるから落ちるので、帽子などを受け皿にして採取する[6]

 

現在ではむかごの状態から畑で栽培されており、流通しているのは栽培ものが多い。収穫しやすいように、細長い塩化ビニールパイプや波板シートを使って栽培している。なお、天然のもの(自然生・自然薯)は、掘り出す行為そのものが山の斜面の崩壊を助長すること等の理由から、山芋掘りが禁止されている場合がある。

 

更に詳しくは↓

 

 

 

利用法