■新暦・旧暦、月の日数の話
◇新暦の月の日数
  10月は何日までありますか?

 と質問されて、答えられない人はあまりいないと思います。
 ひょっとして、そんなあたりまえのことが質問されるはずはないと、質問の
 内容を深読みしすぎて答えられないことはあるかもしれませんが。
 答えは、もちろん

  31日まであります

 となります。
 この「○○月は何日までありますか?」という質問で、一瞬考えなければい
 けない月があるとしたら現在は 2月だけ。 2月は大体 4年に一度閏日が入る
 ことがありますから、28日までの年と29日までの年がありますから、

  えっと、今年は閏年じゃないから28日までだ

 と閏年か否かを判断してから答えることになります。まあ、閏年か否かを判
 断してといっても、考え込むほど難しい問題ではありません。

◇旧暦の月の日数
 旧暦では小の月は29日、大の月は30日なので、その日がもし30日なら翌日は
 確実に月替わりです。だから、月末の日、晦日を

  晦日 = みそか(= 三十日)

 と言うようになったのです。
 とはいいながら、小の月なら晦日は29日までなので、その日が29日なら、こ
 こは少々悩む必要があります。その月が小の月か大の月かで話が違ってくる
 のです。
 今日は旧暦では九月ですが、この月の晦日は29日か30日か?

  えっと、九月は小の月だったかな? 大の月だったかな?

 と悩むことになるわけです。
 なぜ、ここで悩むかというと、旧暦の九月が小の月か大の月かは、年によっ
 て違うからです。
 「旧暦の九月は」と書きましたが実はこれは九月に限った話ではなくて、ど
 の月でもその月が29日で終わるのか30日まであるのかは毎年異なるのです。
 そのため、確認しないと判らないわけです。

◇旧暦の月の日数の決まり
 旧暦についてのよくある質問の一つに、

  旧暦の大の月と小の月の順番を決める計算式を教えてください

 というものがあります。新暦の場合

   1月:大,  2月:小,  3月:大, ・・・11月:小, 12月:大

 とパターンが決まっています。このパターンのよく知られた憶え方としては、
 「ニ(2)シ(4)ム(6)ク(9)サムライ(11) 小の月」というものがあります。
 これさえ憶えれば簡単。最後の「サムライ(11)」は、サムライを「士」と書
 けば判るとおり「サムライ」が「十」と「一」を組み合わせた文字だからで
 す。ここだけちょっと捻っていますが後はそのものズバリで判りやすい。

 さて、では質問者が知りたい旧暦の月の大小の並びのパターンどうやって知
 るかというと、実は決まった方式というのがないのです。

 旧暦の場合、「新月の日が暦月の始まりの日」という決まりがありますから
 新月の日を計算するとその日がある暦月の最初の日、つまり「一日」と判り
 ます。暦月の日数を知るには、こうして各暦月の一日をまず求めて、その後
 で一日と次の月の一日の間の日数を数えて決めることになります。
 始めに

  ○○月は何日まで

 と決めるのではなくて

  ○○月と翌月の一日がいつかを計算して、後でその間は何日間か数える

 というものなのです。
 ちなみに旧暦の月の初めの日「一日」は必ず新月、「朔」なのでこの一日の
 ことを「朔日」とも書きます(そして、「ついたち」とも読みます)。

◇新暦の月の日数の方が複雑?
 旧暦の暦月の月末を知るためには、翌日が新月か否かを調べる必要がありま
 した(大の月の晦日なら別ですが)。なかなか面倒なことで、その点新暦は
 単純でよかったなと私は思うのです。

 しかし、私は単純でいいと思っている新暦も、明治の改暦直後にこの改暦を
 批判する理由の一つに

  新暦は旧暦に比べて月毎の日数がまちまちで判りにくい

 というものがありました。
 批判は、新暦の月の日数には、31,30,29,28 と 4種類もあって判りにくいと
 いうものです。

 確かに月の日数の種類という点では旧暦は 30,29の二種類しかありませんか
 ら単純といえば単純かも知れませんが、その二種類の並びがどうなっている
 のか、毎年まちまちに変わることを考えるとこっちの方がずっと「複雑」な
 のではないかと思うのですが。

 新暦に慣れてしまった私からすると、「ニシムクサムライ」だけを憶えてお
 けば直ぐにその月が何日まであるのか判る新暦の方がずっと単純に思えるの
 ですが。年ごとに月の大小の並びが変化してしまう旧暦では、毎年月の大小
 を覚えるのも大変そうと思ってしまいます。慣れれば平気だったのかな?

 皆さんは月の日数の決め方、新暦と旧暦どっちの方式が判りやすい(便利)
 と考えますか?

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2022/10/14 号