「止まない…」
部屋で一人呟いた。
窓の外を見れば音もなく、真白い雪は降り続く。
空は厚い雲に覆われているのに、雪の反射で辺りは淡く明るい。
自分の仕事を終え、ぼんやりと自分が今ここにいるまでの過程を思い出す。
「随分と遠くまで来た…」
ガチャリという音に振り返れば、この部屋の主、土方さんが入ってきた。
「おかえりなさい。会議、お疲れ様でした」
「ああ」
伏せ目がちにふぅと短く息を漏らした土方さん。
首もとを緩めようと釦を一つ外した。
「今お茶を煎れますね」
笑みを向けながら土方さんの横を通りすぎようとすれば、腕を捕まれ引き止められた。
「…どうかされました?」
驚いて見上げれば、そこには吸い込まれそうな瞳が待ち受けていた。
「…何を見ていた?」
「雪を…、雪を見ていました」
視線だけを窓の外へと向けて応えた。
「雪、か」
「…私が新撰組に預かって頂いてから何度目の雪だろうかと」
「…そうか」
腕を掴んでいた大きな手は窓辺に導くように私の腰に緩く巻き付いた。
窓辺に立つ二人。
背には私を包むように土方さんの温かさを感じた。
言葉もなく、ただ窓の外を見ている。
この雪のように、土方さんの背中には重責や期待、散っていった方たちの思いが
本人も知らぬ内に募っていくのだろう。
どれだけの思いを背負っているのか。
「…何を考えている」
「春が…。春が待ち遠しいです」
私は窓の外を見つめたまま、問い掛けにそっと応える。
「春が来たら、…また二人で春の月を見ましょうね」
そっと土方さんの腕でその胸元に導かれた。
後ろから抱き締められ、私の首もとに顔を埋めた土方さんが小さく息を吐く。
「…ああ、そうだな。月を肴に晩酌も悪かねぇ」
耳の傍で囁かれた言葉は私の鼓膜を甘く震わせる。
土方さんは顔を上げてそっと私の身体を反転させた。
絡む視線にぎゅっと心まで囚われて。
そして私の頬に手を添える。
温かい、愛おしい手。
「お前が酌してくれるんだろ?」
「勿論です」
どちらからともなく零れた笑み。
この戦いが終わらなければ、そんな心安らぐような時間は持てないかもしれない。
それは互いにわかりきっていることで。
それでも、夢を見たっていいじゃないか。
近づいてきた顔に私はそっと目を閉じた。
触れた温もりに春を願いながら。
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どうも。みふゆです。
義実家、暇でねーwww
止まない雪を見ながら書き始めて、
「あー、これはいいペースで書けるぞ」と思ってたら
娘たちに外で遊ぼうと言われ。
来客があり、書き終わったのが今っていうね。
とりあえず今年最初にあげたお話ってことで。
ケータイからのアップなので、いつもと行間とか色々違っててすみません。
今年もマイペース。
宜しくお願いしますm(__)m
みふゆ