薄桜鬼・妄想小説【君の名を呼ぶ】第38話 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。



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このお話に関してはまだ目次がないので、
遡って読まれたい方はお手数ですが、
ブログのテーマ別から選択して読んでやってくださいm(_ _ )m





いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。





















屯所内に夜の帳が降りる。



沖田に抱きしめられながら横たわるも、冴える目と思考。


嫌でも頭の中では羅刹と結びつく。


視線をあげれば静かに寝息を立てる沖田。

後ろめたい気持ちが次々と湧き上がり、布団の中をもぞもぞと動き身体を反転させ、沖田に背を向けた。



「…冴…?」

沖田の掠れた声が耳を掠めるも反応しないでいれば、後ろからぎゅっと抱きしめられる。


冴は不意に自身が初めて人を殺めた時のことを思い出した。


沖田から注がれる温もりはあの時と同じではなく、今ではもっと深いものだと感じる。

その温もりに視界がぼやけ、雫が肌を伝う。


ただ、あの時とは違い、その温もりを振り払うことも縋ることも出来ない自分がいた。



『せめて、もう少しこのままで』


そう願いながら訪れた眠気に身を委ねたのは空が白んだ頃だった。






眠りから覚めれば陽も傾いてきた頃だった。


それに気付いた冴は一つ溜め息を吐いた。




「…おはよう」

部屋の壁にもたれて座っていた沖田が声をかける。


「…もう夕刻でしょ?」


「…だね」

冴は下唇を噛んだ。


身体は正直と言うべきなのか、身体中の隅々まで羅刹として生きているという事実が
冴の心をじわじわと追い立てる。



「土方さんがね、目が覚めたら話があるって。部屋に来るって言ってたけど…どうする?」


「うん、土方さん呼んできてくれるかな?」


「…わかった。待ってて」

目を少し細めて、少しの笑みを浮かべた沖田の表情に同じように応える冴。


離れていく足音を耳で追いかけながらも、一つ息を零す。





土方の部屋を訪れた沖田。


「冴が目を覚ましました」


「…わかった。総司、幹部連中を集めてきてくれ」


「え、嫌ですよ。めんどくさい」


「…てめぇ。…山崎、いるか?」

沖田を睨みながら、言葉を投げる。


「はい、ここに」


「今いる幹部連中を松原の部屋に集めてくれ」


「承知しました」


「最初っから山崎君に言えばよかったのに」


「大体てめぇはなぁ…」

しばらく土方と沖田の言い争いは続いたが、廊下に出れば二人とも自然と口を噤む。



二人の脳裏に浮かぶのは冴の姿。



「土方さん、…冴をどうする気ですか?」


沖田の問いかけに土方は応えないまま、真っ直ぐに前を見据え足を進めた。








「忠司、入るぜ?」


障子戸が開いて顔を上げれば部屋に入ってきたのは原田、永倉、藤堂の三人だった。



「お、元気そうだな、忠司」


「ご心配おかけしました」


「なんだぁ、心配して損したぜ」

カラカラと笑う藤堂に笑みを浮かべてる原田と永倉。


ほんの少し、冴の心に温かいものが拡がった。




「忠司、入るぞ」


「はい」

土方に続いて、斎藤、最後に沖田が部屋へと入ってくる。

沖田は冴を見、口元に薄く笑みを浮かべ「大丈夫だよ」と言うように小さく頷いた。




冴の前に座り、見据える土方が口を開く。


「お前の今後の扱いについてだ、松原」


「…はい」

土方の言葉を固唾を飲んで待つ。


「四番組組長、松原忠司は女と共に心中した」


「…」


「松原忠司は死んだ」


「…」


「…これからは松原冴として生きろ」


「…」


土方の言葉に冴の瞳が揺らぐ。



「お前らももう忠司って呼ばずに名を呼んでやれ」

土方は視線だけを他の者へと移す。


「表向き、お前は山南さんと同じように死んだことにする。
悪いが山南さんや他の羅刹がいる場所へと移ってもらう。
伊東さんたちにはばれたくねぇからな。
他の幹部に会うのも必要最低限だけにしろ」

土方の言葉に咄嗟に沖田が何かを伝えようとするも、
その言葉さえ沖田の口から上手く出ず、飲み込んだ。



「…承知しました」


替わりに冴の澄んだ声が部屋に広がった。


じっと冴を見据える土方。

冴もじっと土方と視線を合わせていたものの、その心の底まで見透かされそうな視線に目を逸らした。




「幸い、伊東一派は今は出かけている。今のうちに移動しろ」


「…はい」


「話は仕舞いだ。詳しいことはまた山南さんから聞け」


「承知しました」

立ち上がる土方に頭を下げる。

土方に続くように斎藤も部屋を出て行く。


原田、藤堂、永倉も冴に声をかけようとするものの上手く言葉に出来ず、口を噤む。

畳みに視線を落としたままの冴に視線を向けながらも部屋を出て行く。


原田は冴の前にしゃがみ、頭を優しくポンポンと撫でた。


「なぁ…。これだけはわかってくれ。
お前が羅刹になろうが、何になろうが俺らの中でお前の存在は変わらねぇよ。…冴」


原田の言葉に更に顔を俯かせた冴は、両の拳を更にきつく握った。